※レポート更新しました(2018/08/27)
【レポート】
こんにちは、BPIA広報委員会の石田です。今回は8月22日(水)に日本オラクルさんのセミナールームで開催された、BPIA例会についてレポートさせていただきます。
今回の例会では江戸時代研究会の立山徹氏をお招きして「江戸時代を学ぶ」をテーマにご講演いただきました。
立山先生はBPIA会員の坪田さんのご紹介です。今年の6月に開催された新緑セミナーでの倉重会長の講演から「江戸時代」をテーマに勉強会を行うという宿題が坪田さんに投げられたそうです。今回の勉強会のおかげで私自身も大学時代に学んだこと(近世日本史のゼミだった)を振り返るきっかけにもなりました。
お話の中で非常に印象的だったのが、「江戸時代の人々は、いかに自分の生活を楽しむかをとても考えていた」というところでした。江戸時代の価値観は「持たず」「急がず」。
「持たず」のひとつは、モノを持たないこと。長屋のような住居に住んでいた人だと、そもそも家が狭くてモノを置くことができないというのもありますが、余計にモノを増やさず、コト(経験や体験)にお金を使おうという考え方に比重がありました。「持たず」のもうひとつは、コンプレックスを持たないこと。自分と他人を比べてコンプレックスを抱えても良い点はひとつもありません。「比べず」「悩まず」というのが江戸の価値観でした。
「急がず」のひとつは仕事です。現代社会では「いかに効率を上げるか」「いかに納期を短くするか」というのが強い価値観です。ただ江戸時代の人は3日間かかる仕事を1日でやろうとしない。頼まれ仕事をきちんと3日間をかけて丁寧に行なったといいます。また「急がず」のもうひとつが人付き合いです。庶民では子どもが生まれると、自分たちだけではなく地域で子どもを育てるのが文化でした。きちんとした信頼関係を積み重ねるためにも時間をかけて丁寧に人と接することが価値観になりました。
このお話を聞いて自分自身を振り返ると、まったく真逆のことをしてしまっている節があります。どうしても自分と他人を比較して悩んでしまいますし、できるだけ効率的に短納期でサイクルを加速させようとしてしまいます。時にはそれに疲れてしまうこともあります。「いかに自分の生活を楽しむか」という視点で考えた場合、江戸時代の価値観は非常に成熟したものだったのだろうなと感じました。
また他にも印象的だったのが、「江戸の文化は大衆文化」だというお話。歴史を学んできた自分、日本人としての自分には当然のことだと思っていましたが、「世界の文化は貴族がつくり、その貴族文化が大衆に落ちてきた。江戸の文化は大衆がつくった」と聞いて目からウロコでした。世界と日本では文化のつくられ方の土台が異なるということなのでしょう。
現代社会で日本の漫画やアニメ、音楽が世界中で人気になっています。日本の中にいる自分からすると、「なぜだろう?」とそこまで人気がでる理由はわからないのですが、日本の漫画やアニメの面白さの土台にあるのは日本が培ってきた「大衆文化」なのだろうと感じました。もしかしたら世界が真似したくでも真似できない圧倒的な構造の違いなのかもしれません。
いかに自分の考え方が「自分の感覚に引っ張られているか」を立山先生のお話で再確認しました。最後になりますが、立山先生をご紹介いただいた坪田さん、会場をお貸しいただいた日本オラクルの宇木さん、BPIA事務局の川上さん、誠にありがとうございました。
【開催概要】
2018年度第4回BPIA例会は、8月22日(水)朝8:00より開催です!
この度は、BPIA会員の坪田知己氏にモデレーターをお願いし、江戸時代研究家の<立山 徹 氏>をお招きしてご講演いただきます。
歴史人口学や家族人類学、経済人類学の立場から江戸を研究されている立山氏より、江戸時代から学ぶ興味深いお話をお伺いしていきます。
大変貴重な機会となります。どうぞ奮ってご参加ください!
たくさんの皆様のお越しをお待ち申し上げております。
日時: | 2018年8月22日(水)朝8:00〜9:30(受付開始 7:45〜) |
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場所: | 日本オラクル株式会社 オラクル青山センター 13F 会議室 外苑前駅 4B出口直結 http://www.oracle.com/jp/corporate/branch/aoyama-078891-ja.html |
タイトル: | 江戸時代に学ぶ |
講師: | 立山 徹(たてやま とおる)氏 江戸時代研究家 |
対象: | BPIA会員限定 |
参加費: | 3,000円(朝食代込。当日申し受けます) |
進行: | 田村俊和(BPIA理事 例会担当) 日経BP社 取締役 経営メディア本部長 |
※「例会」は、BPIA会長、会員経営者、または外部経営者知見者を講師に招き、グローバル時代の経営を様々な視点で議論し、相互研鑽とビジネス交流を図る、BPIA会員限定の勉強会となります。
◎講演概要
江戸時代は定常社会であり、人口も経済も変化の少ない穏やかな時代でした。
全体としては、人口は定常でしたが、地域により増減があり、一部地域では少子高齢化や人口減少、またそれに伴う経済縮小を経験しています。
現代日本が直面している人口減少、経済縮小は初めての経験ではありません。
日本の江戸時代先人たちが、いかにその事態に対処したかを学ぶことで、これからの人口減少時代に対応するヒントが得られるかもしれません。
日本は、江戸時代中期以降文化的にヨーロッパと比肩できる水準に達していました。
近代化は経済水準よりも家族構造と識字率(リテラシー)が人口の増加減少や経済発展に強く影響するというエマニュエル・トッドの学説をもとに江戸時代のヨーロッパと日本のシンクロニシティについて検証します。
◎講師プロフィール
立山 徹(たてやま とおる)氏
江戸時代研究家
昭和29年生まれ。年少時より身体が弱く、学校に行かず、家で本ばかり読んで過ごす。
時代小説から、江戸時代に興味を持ち、その魅力に嵌る。
現在は、歴史人口学や、家族人類学や経済人類学の立場から、江戸を趣味で研究中。
モットーは「古典以外は読まない」。
◎モデレータプロフィール
坪田 知己(つぼた ともみ)氏
著述業・文明デザイナー、京都工芸繊維大学 シニアフェロー
岡山県生まれ。1972年日本経済新聞社に入社、エレクトロニクス、IT分野の記者などを経て、2009年、日経メディアラボ所長を最後に定年退職。
2003年から6年半、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別研究教授(経営学、メディア論)。
定年後は、各地で文章講座を開き、教え子は約1600人。趣味は文明論の研究。
近著は『サービス文明論』(アマゾン)。BPIA会員。
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