レポート 例会

BPIA 例会【2019年度第2回】(2019/2/20)『MaaSが目指す社会と産業への影響』

※レポート更新しました(2019/02/26)

【レポート】

 こんにちは。BPIA広報委員会の石田です。今回は2月20日(水)に日本オラクルさんのセミナールームで開催された今期二回目のBPIA例会についてレポートします。

 今回の例会では株式会社ローランド・ベルガーのダイレクターでおられる林達彦氏をお招きして、「MaaSが目指す社会と産業への影響」と題しご講演いただきました。

 ローランド・ベルガーでは社内ベンチャーとして2018年の10月から「みんなで動こう!」プロジェクトが発足し、2019年から本格的な活動がスタートしています。「みんなで動こう!」プロジェクトは、日本の移動総量を増やして社会と経済をより元気にすることを目的としたプロジェクトであり、人々がもっと移動したくなるような「刺激」や「出会い」を提供し、その仕組みをつくっていきたいと考えられているとのことです。

 2018年の11月28日、トヨタの豊田社長が「トヨタをモビリティーカンパニーにモデルチェンジする」と発表しました。これからは自動車を企画・製造・販売するだけではなく、移動に関するビジネスを展開していくというメッセージです。トヨタも「MaaS」に手を付けたと言えます。トヨタはソフトバンクと合弁会社を設立し、オンデマンドモビリティ、データ解析、Autono-MaaSなどの事業を今後展開していきます。

 自動車関連のビジネスの発展を表すキーワードとして「CASE(ケース)」という言葉がありました。これが「MaaS」に進化をしたことで、新しい時代の到来が予感されています。MaaSによって、様々な種類の輸送サービスが需要に応じて利用できる単一のサービスに統合されてきます。移動の選択肢の多様さ、決済機能との統合、月額定額制の移動サービスなど、MaaSによって私たちの生活にも大きな変化が起こりそうです。

 北欧のフィンランドでは自家用車の利用抑制を目指し、MaaSによるスマートシティへの移行が着手されています。自家用車のコスト高はMaaSが期待される一因でもあり、自家用車の稼働率はたった2%なのにも関わらず年間のコストは平均50万円~60万円。1日に2,000円のタクシーを年間300日乗るのと同じコストです。この観点からすると、私自身も相当ムダなコストを支払っていることになります。少し反省をしました。

 またスタートしたばかりのMaaS。手を付け始めた企業ばかりの中でどこが覇権を握るかが注目されています。タイプとして「独占型」「連携型」「自由市場」の3つが挙げられており、まだ業界標準にはなり得ていないものの、海外では「whim」「moovel」「qixxit」などのプレーヤーがいます。特にwhimは月額499ユーロの定額制で、タクシー・レンタカーは1回5キロまでなら乗り放題、また公共交通機関も乗り放題ということです、日本でもPoCの段階ですが「my route」や「あらお相乗りタクシー」などのサービスがあります。

 今後Maasのビジネスが発展することで、産業に与える影響が様々な場所に起こります。特に印象的だったのは「MaaSが不動産の価値に影響を与える」という話でした。現状の不動産価値は基本的に駅に帰属している部分が大きく、MaaSがその価値を変えてしまう可能性があるということです。

 交通データのオープン化、ビッグデータからうまれる社会設計、恩恵を受けられるのは需要の高い都市部、交通の選択肢が少ない郊外・地方をどうするかなど、まだまだMaaSの課題はありますが、今後日本の人口減、東京への一極集中が避けられない中で、移動のひとつの解決策になるのかもしれません。これからも注目をしていきたいところです。

 最後になりますが、林先生、会場をお貸しいただいた日本オラクルの宇木さん、BPIA事務局の川上さん、誠にありがとうございました。


【開催概要】

2019年度第2回目となるBPIA例会は、2月20日(水)朝8:00より開催です!

この度は、ローランド・ベルガー ダイレクターの<林 達彦氏>をお招きしてご講演いただきます。
どうぞ奮ってご参加ください!
たくさんの皆様のお越しをお待ち申し上げております。

日時: 2019年2月20日(水)朝8:00〜9:30(受付開始 7:45〜)
場所: 日本オラクル株式会社
オラクル青山センター 13F 会議室
外苑前駅 4B出口直結
http://www.oracle.com/jp/corporate/branch/aoyama-078891-ja.html
タイトル: MaaSが目指す社会と産業への影響
講師: 林 達彦(はやし たつひこ)氏
株式会社ローランド・ベルガー ダイレクター
対象: BPIA会員限定
参加費: 3,000円(朝食代込。当日申し受けます)
進行: 田村俊和(BPIA理事 例会担当)
日経BP社 取締役 経営メディア統括

※「例会」は、BPIA会長、会員経営者、または外部経営者知見者を講師に招き、グローバル時代の経営を様々な視点で議論し、相互研鑽とビジネス交流を図る、BPIA会員限定の勉強会となります。

 

◎講演概要

トヨタ自動車がモビリティカンパニーに変わっていくと宣言したように、交通にかかわるテクノロジー、ビジネスモデルは今後大きく変化する。その変化をけん引する一つの要素がMaaS(Mobility as a Service)の進展である。今回の講演では、日欧米で進んでいるMaaSの流れをその背景、各地での実例をもとに、やさしく解きほぐし、さらに自動車や不動産、保険などそれぞれの産業にどのような影響を及ぼすかを展望する。

 

◎講師プロフィール

林 達彦 (はやし たつひこ)
株式会社ローランド・ベルガー ダイレクター

1988年日経マグロウヒル社(現日経BP社)入社。機械、デジタルエンジニアリング、パソコン、デジタルガジェットの記者・編集者を経て、2004年より日経Automotive編集部、2015年より編集長として、自動車業界の技術・経営を長年取材する。2018年10月より、ローランド・ベルガーにて、移動の課題解決や地域創生にかかわる「みんなでうごこう!」プロジェクトのリーダー。東京工業大学修士、テンプル大学MBA。