【レポート】
こんにちは。BPIA広報委員会の石田です。今回は2月17日(水)にオンラインにて開催されたBPIA例会についてレポートします。
今回の例会では「SF的想像力の展開-SFプロトタイピング」と題し、SF作家・SF考証家の高島雄哉氏にご講演いただきました。
高島氏は東京大学を卒業後、東京藝術大学に入学されたという異色の経歴の持ち主。SF考証の仕事として「ゼーガペインADP」や「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」「ブルバスター」などの作品を手掛けられています。また2019年出版の「21.5世紀 僕たちはどう生きるか?」など多数の書籍も執筆されています。
SF考証とは、時代劇などでおこなわれている時代考証の未来版です。未来を科学的そしてSF的に予測して設定を立てていきます。2021年時点で日本には10名ほどしかいない仕事だということです。SF考証のテーマはストーリーから、SFガジェット、衣食住、未来の文字など多岐にわたります。機動戦士ガンダムについては1980年代のアニメのため、そのSF考証をさらに未来のものに設定し直しているとか。
ちなみにSF考証という仕事は日本発の仕事であり、アメリカではサイエンスコンサルタントという仕事があるそうです。日本初のSF考証のアニメーションは1965年の「宇宙エース」とされ、「鉄腕アトム」の2年後のアニメーションです。手塚治虫先生については、手塚先生の発想が独特すぎて外部のSF考証の必要が無かったそう。
昨今ビジネス的ニーズが高まっているSFプロトタイピングとは、SFを活用したプロトタイプ作成のことです。SFアイデアとSF的想像力を活用して、確実な未来と不確実な未来を描いていきます。SF知識と理論、予測と想像をかけ合わせてプロトタイプを創造していく。業界や企業の狭まった発想を広げるための手段として求められています。SF考証とSFプロトタイプの仕事はほぼ一緒であり、SFが描き出すフィクションをアニメーションに落とすか、製品やサービスに落とすかの違いである、いずれにせよ社会の未来を想像することには変わりがない、というお話は非常に納得がいくものでした。
高島氏はSFプロトタイピングがさらに求められる分野として、リモート・スポーツ・音など10種類のテーマについてその可能性を示唆してくれました。特にこれからのビジネスと我々の生活に大きく結びつく可能性があるのが「VR」であり、現状「VRを体験したか、していないか」で意見が分かれてしまっている段階だけれども、VR入門は必ずした方が良いとのこと。エンターテイメントの未来予測としても、昨年(2020年)はコロナ禍によりオンライン配信(Netflixなど)の一般化が強かったが、今年は本格的にVRが来るのではないか、そしてVRこそ最終芸術になりえるのではないか、ということでした。
高島氏のお話をお聞きして、「Oculus Quest 2」や「AirPods」など新しいツールを積極的に体験していかなければいけないなと改めて感じました。最後になりますが、高島様、例会担当の田村さん、BPIA事務局の川上さん、誠にありがとうございました。
【開催概要】
2021年度第2回BPIA例会は、2月17日(水)開催です!
今回は、『SF的想像力の展開 – SFプロトタイピング』と題し、SF作家の<高島 雄哉 氏>よりご講演をいただきます。
現在盛んに研究されている〈SFプロトタイピング〉について、SF作家・考証家ならではの発想のしかたをお話いただきます。
大変興味深いご講演をいただける予定です。貴重な機会に皆さまどうぞ奮ってご参加ください!
日時 | 2021年2月17日(水) 9:00〜10:30 |
---|---|
開催方法 | Zoom ※URL等情報は、お申込みいただいた皆様へ別途ご案内いたします |
タイトル | SF的想像力の展開 – SFプロトタイピング |
講師 | 高島 雄哉 氏(SF作家・SF考証家) |
対象 | BPIA会員限定 |
進行 | 田村 俊和(BPIA理事 例会担当/株式会社日経BP読者サービスセンター 代表取締役社長) |
※「例会」は、BPIA会長、会員経営者、又は外部経営者知見者を講師に招き、グローバル時代の経営を様々な視点で議論し、相互研鑽とビジネス交流を図るBPIA会員限定の勉強会となります。
◎講演概要
SF的な想像力によって、これまでとはまったく異なる新規アイデアを創出しようという試みは、これまでも多く実行されており、ここ数年はより実践的なレベルの依頼も非常に増えています。
また、SFアイデアの現実への影響関係や、SF的な発想から製品やサービスのプロトタイプを作る〈SFプロトタイピング〉は、現在盛んに研究されています。
本講義ではSFとビジネスの相互作用をテーマに、SF的想像力が発揮された歴史的な実例から最新エンタメ事情までを取り上げながら、〈小説家+SF考証〉という立場から、SF的な発想のしかたについてお話しいたします。
◎講師プロフィール
高島 雄哉 (たかしま ゆうや) 氏
1977年山口県宇部市生まれ、東京都杉並区在住。東京大学理学部物理学科卒、東京藝術大学美術学部芸術学科卒業。研究テーマはそれぞれ宇宙物理学と映画美学。
2014年、ハードSF「ランドスケープと夏の定理」(創元SF文庫)で第5回創元SF短編賞を受賞。同年、数学SF「わたしを数える」で第1回星新一賞入選。2016年からはSF考証として『ゼーガペインADP』『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』『ブルバスター』、VRゲーム『アルトデウスBC』に参加している。
著作は『エンタングル:ガール』(東京創元社)、ノンフィクション『21.5世紀僕たちはどう生きるか』(講談社)、『不可視都市』(星海社)。
最新作はVRアンソロジー『ALTDEUS : Beyond Chronos : Decoding the Erudite』(早川書房)、拡張現実SF『青い砂漠のエチカ』(星海社)。
空想的な姿を描いているのではなく、過去から現代にいたるまでの変化とその速度、そして現在の技術革新を踏まえてSF考証家としての未来を提示しています。医療、食品、教育、モビリティ、金融からエンタテインメントまで15分野にわたります。こういう視点を持たないと世界の変化についていけなくなると考えさせられる一冊です。(文:田村俊和)