Webビジネス研究会 レポート 研究会 2014年度 研究会/講演会

【レポート】第13回Webビジネス研究会~少数精鋭ベンチャーが作るスマホ時代の新しいECプラットフォームとは?

日 時:2014年3月10日(月)16:00~19:00
テーマ:少数精鋭ベンチャーが作るスマホ時代の新しいECプラットフォームとは?
場 所:日本オラクル(外苑前)
講 師:鈴木仁士 Wondershake.Inc CEO <告知

1jpg皆様、こんにちは。BPIA(ビジネスプラットフォーム革新協議会)/Webビジネス研究会ナビゲータの石田麻琴です。今回は、3月14日にオラクル青山センターのセミナールームで開催させていた、第13回Webビジネス研究会「少数精鋭ベンチャーが作るスマホ時代の新しいECプラットフォームとは?」についてレポートさせていただきます。

 今回、ゲスト講師にお招きしたのは、Wondershake.IncのCEOである鈴木仁士さんです。鈴木さんは、私の前職の元インターン生を通じて紹介してもらいました。私がネットショップの運営者として仕事をしていた時代(もう6年以上前でしょうか)に学生インターンとして入社した伊藤さんが、いまWondershake.Incのマーケティング担当として鈴木さんと一緒に仕事をしています。ちなみに、第2回のWebビジネス研究会でお招きした株式会社みんなのウェディングの中村さんも、私の前職の学生インターン生です。他にも前職の元インターン生が何名かいるのですが、伊藤さんや中村さんなど24歳~28歳くらいで、すでにインターネットの世界で活躍している人が多く、楽しい職場で働いていたんだなぁと、懐かしくなります。

 鈴木さんに初めてお会いしたのは、ほんの一か月前、2月のことだったのですが、伊藤さんからよく話を聞いていた&学生起業家として有名だったこともあり、もう4年前くらいから知っていました。ワールドビジネスサテライトからの取材であったり、Wondershake.Incの最初のサービス「Wondershake」の流行があったりして、私にとって鈴木さんは「いつかお話を聞いてみたい人」でした。なので、今回、このWebビジネス研究会という場に出てももらえて嬉しかったですし、お話しいただいた内容も予想以上のものでした。25歳という年齢で、ここまで仕事の真理について、実体験から語れる人は、日本中でもそういないだろうな、と。

 私が気になっていたのは、鈴木さんのルーツです。鈴木さんは、お父さんが商社に勤めていたこともあり、幼少期をナイジェリア、10代をロンドンで過ごしています。高校からICUに入学し、鈴木さんと同様、子どもの頃から様々な文化・価値観で成長してきた同級生たちと過ごしてきたわけです。鈴木さんに転機が訪れたのは、大学の交換留学でアメリカのシリコンバレーに住んだときのことです。シリコンバレーで起業をしている日本人に片っ端から会いに行った鈴木さんは、本間さん・吉川さんという2人のメンターと出会います。本間さんから「起業したくて英語もできるなら、アメリカでやって成功しよう」、吉川さんから「起業するなら、若ければ若い方が良い。大きいビジョンをもって、最短距離でやろう」という言葉をもらい、起業を決意します。22歳のことです。

 鈴木さん、そしてWondershake.Incのミッションは、「より驚きのある毎日を」。如何に新しいヒト、モノ、コトとの出会いを毎日つくれるか?を考え、最初のサービスである「Wondershake」を着想しました。そこから、Wondershake.Incのチーム作りの始まりです。サービス構築の開発者やデザイナーを3ヵ月から半年をかけて集めていきます。大学の友達の知り合いにいい人がいると聞けば会いに行き、twitterで関心がありそうな人をピックアップして、直メッセージ、翌日ご飯を食べて、チームに入ってもらう、なんてこともしました。それからインキュベーションプログラム「Open Network Lab」に参加し、たくさんの起業家仲間やアドバイザーとのネットワークを広げ、サービス構築をより加速的に進めていくことができたと言います。

 これまでWondershake.Incは、前述の「Wondershake」、facebookのフィード閲覧に特化したサービス「Cake The Reader」、チロルチョコ初の公式アプリ「チロルチョコIPのカジュアルゲーム」、ゲームアプリの攻略サイトとしてスタンダートな地位を築きつつある「mobaQ」などのサービスを立ち上げてきました。しかし、本当のホームランを出すのは、これから。昨年Wondershake.Incがリリースした、女性向けのショッピングアプリが「Locari」です。

 「Locari」をスタートさせた理由として、鈴木さんは、メディアとEC業界の流れについて話してくれました。1つ目は、スマートフォンへの急速なデバイスシフト。雑誌やカタログといった従来メディアがもつコンテンツがどんどんスマホ化、ショッピングもPCからスマホ上に移行してきています。2つ目に、検索型のショッピングから、ディスカバリー形のショッピングの時代がきていること。大手のショッピングモールは検索ベースでの購買行動しかカバーできていないため、購入ファネルより手前でユーザーの関心を集め、「欲しい」を作り出せるECサービスが次の大きな市場になること。そして、3つ目。ECプラットフォームの手数料は0%に動くだろうということ。販売コストがかからず、かつ「売れる」プラットフォームへの需要が出店店舗側で高まってきているということです。

 1つ目の、「スマートフォンへの急激なデバイスのシフト」として、ショッピングはもちろん、従来の雑誌メディアやカタログがウェブ化、スマホ化しています。それによって商品発見(メディア部分)から購入(ショッピング)までをカバーするサービスがスマホ上で今後台頭してくるだろうということです。

2つ目の、「検索型のショッピングから、ディスカバリー形のショッピングの時代への変化」です。この対策のポイントとしては、最新トレンド記事の発信(Naverまとめ)や画像・写真(Pinterest)を通じて商品を発見させるサービスが、ひとつのヒントになるのではないかと考えられます。

そして3つ目、「ECプラットフォームの手数料の0%化」。対策としては、いかにして「Locari」で購入することの付加価値をつけることができるか。「Locari」側がユーザーに合ったアイテムやスタイルを提案するだけではなく、商品を販売する出店店舗側からも「Locari」だけの特典をつけて販売しているとのことです。

 起業をしてからこれまで3年間で、鈴木さんは3つの学びがあったと言います。

1.ビジョンの大きさとエクセキューションが全て
 ビジョンと、事業構想の大きさで、ヒトと資金が集まってきます。プラットフォームをつくりたいのか、ひとつの機能をつくりたいのか、それを明確にし、人に伝えるべきです。

2.場数は多く、ただ最短距離で
 Trial&Errorの数だけ、精度は上がります。それを出来る限り、最短距離でやることが重要です。経験豊富なアドバイザーを持ち、助言をもらうことで、自分自身の穴埋めをすることができます。

3.成長タイミングを逃さないこと
 成功する事業でもタイミングを外すと伸びません。Youtubeもfacebookもそれまで同じジャンルのサービスはたくさんあった。しかし、成功したのは彼らだった。何をつくるか、どう作るかも大事だけれども、いつ勝負するかも大切。

 私は、栄枯盛衰の流れが非常に早いインターネットの世界で、これまで鈴木さんが経験されてきたことが凝縮されている学びだと思いました。たかが3年なのか、されど3年なのか。さらに経験を積んでいく中で、考え方も少しずつ変わっていくでしょうし、新しいフェイズに入ったとき、この学びが塗り替えられるときがくるかもしれません。ただ、25歳といえば、大学を卒業して新入社員として入社したサラリーマンが、やっと3年目を迎えるというような年です。その25歳という年齢で、ここまでの経験を積み、ここまで語れる人がどれくらいいるでしょうか。私は、驚きとともに、若干の嫉妬をしてしまいました。なぜなら、ナビゲータ石田は、25歳になった年に、初めて社会人になったので。同じ25歳として重ね合わせたときに、ここまで差がついてしまっていたのか、と。

 第13回Webビジネス研究会、いかがだったでしょうか?今回もたくさんの方にご参加いただきました。また、今回の研究会で会場をお貸しくださったオラクル青山センターさん、ありがとうございました。次回のWebビジネス研究会は5月14日@プライスウォーターハウスクーパーズでの開催を予定しています。内容等、決まり次第、BPIA事務局よりご連絡を差し上げます。最後になりましたが、ゲスト講師の鈴木さん、ご参加していただいた皆様、会場をご手配いただいた日本オラクル宇木さん、BPIA事務局の青山さん、誠にありがとうございました。それではまた次回、お会いしましょう!

石田麻琴 株式会社ECマーケティング人財育成 代表取締役社長

7-1< いしだ・まこと> 早稲田大学第一文学部卒業後、インターネット通販ベンチャーに6年間勤務。ネットショップ店長として、仕入・マーケティング・システム構築・物流などを1 人でこなし、1年間で売上7,000%アップ、年商3億円を実現。インターネット通販を中心としたマーケティング支援/マーケティング人財の育成を目的とした株式会社ECマーケティング人財育成を設立。有力EC/Web企業を支援。船橋情報ビジネス専門学校特別講師など人材育成にも注力。その他、商工会議 所での講演、新聞やWebでの連載など。
ご紹介;連載中のITMediaエグゼクティブコラム(http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1302/13/news013.html