BPIA(ビジネスプラットフォーム革新協議会)は、2012年秋に、従来の「ビジネスプロセス」から「ビジネスプラットフォーム」に名称変更した。「戦略以前に、人間の能力とやる気を引き出す事業基盤を強化しなければならない」という倉重英樹会長の提唱によるものだった。
この趣旨を広めるため、ビジネスの世界でプラットフォーム革新に取り組んできた企業や経営者をインタビュー形式で取材し、ホームページで紹介することにした。
聞き手は、元日本経済新聞記者、元慶應義塾大学大学院特別研究教授の坪田知己が務めます。
第1回 BPIA会長 倉重英樹 インタビュー
経営は「人の能力とやる気」がけん引する
~~ビジネスプロセスの時代からビジネスプラットフォームの時代へ~~
BPIA(ビジネスプラットフォーム革新協議会)は2012年秋に、従来の「ビジネスプロセス革新協議会」から「P」の名称を変更した。
今、なぜ「プロセス」から「プラットフォーム」なのか?―― 倉重英樹BPIA会長に、その意図を聞いた。
倉重氏は、日本IBM副社長から、PWC(プライスウォーターハウスクーパース)社長、日本テレコム社長を経て、現在はコンサルティング会社シグマクシスのトップとして活躍している。長年の企業経営の経験を踏まえ、「アルゴリズム(論理的)の経営からヒューリスティック(仮説による問題解決)の経営へ」を主張している。
企業経営が、「誰かが考えてみんなで実行する」スタイルでは成り立たなくなり、「社員それぞれが、自分で考えて対応する」に移行する。そのためには社員の能力とモチベーションを高く維持する必要があり、それが「プラットフォーム」の意味だとする。戦略を意識した「ビジネスプロセス」に対し、基盤としての「プラットフォーム」が一層重要だと考える倉重氏の考えをつぶさに伺った。
やることを変えないと持続的成長はない
坪田 倉重さんは1966年に日本IBMに入社され、以来50年近く活躍しておられますが、その間に日本での経営環境はどのように変わってきたのでしょうか?
倉重 私が会社に入った時代は、戦後の復興期を終わって、高度成長期に入った時代でした。俗にいう右肩上がりの時代でした。あの頃は、ずーっと右肩上がりで行くものと思っていました。90年にバブルがはじけてから、ついこの間までは低成長の時代でした。
ビジネスから見ると成長が止まるというのはものすごく大きな変化です。成長が止まっている20年間を見ると、小さな業種に分けると成長しているところも有り、縮小しているところもあって、平均値で見るとほぼフラットということです。 経済成長の時には経営者は売り上げを見ていればよかった。低成長になると、売り上げが伸ばせないから利益を伸ばさないといけない。そうすると、利益を棄損している部分を見つけて、そこを直していかなければいけない。ということは管理単位が小さくなってくるということです。売り上げが伸びないのだからコスト管理が重要になり、内向きになってくる。
今はグローバルな時代です。グローバルな時代に大切なことはスピードとリスクの管理です。昔は「アメリカは低迷してもヨーロッパはいい」「先進国が低迷しても発展途上国はいい」というようなまだら模様で、逃げ場があった。今は全員が風邪をひき、肺炎になっちゃうような時代です。ということは、逃げ場がない。ということは対応を早くしない限り生きていけない。カントリーリスクやテロによるリスクに対応して行かなければならない。
坪田 低成長になってもう20年以上が過ぎていますが、このまま低成長が続くのか、新たな展開があるのかについてはいかがですか。
倉重 みんなが一様ではなくなると思う。いままで、私たちはものごとを平均値で見たがっていたが、それは間違いではないか。経営者の一番の仕事は成長している市場でビジネスを展開することだと思う。これから先はそれを真剣に考えていかないといけない。
私は、企業は「家業」だと思わない。家業はやっていることがずっと続いていくが、企業はやっていることを変えて行かないと持続的な成長を維持できない。
「共感ビジョン」を創れ
坪田 企業が成長するということについても、右肩上がりの時代と今では意味合いが違うのではないでしょうか。
倉重 ビジネスですから、お金は目的ではないけれど、売り上げとか利益がないと継続できない。「本来企業が目的としていたものは何?」というところで企業の成長を見ていかなければならない。そこが成長していれば、多分売り上げはついてくると思う。そこの部分が、企業が持っているビジョンじゃないのか。
坪田 それは、社員の力がついてきているとか……。
倉重 「世の中に対して何をするか?」というベースのところが必要になってきている。
ビジョンというと、日本テレコムの社長になった時に、役員会議室にかかっている「日本テレコムビジョン」というのを、「このまま踏襲しますか?」というところからスタートした。
2時間半議論して、結論は変えることになった。
ある常務が「変えるべきだ」と言った。理由は、「ここに書いてある日本テレコムという社名をKDDIに変えても通用する」ということだった。「すばらしい企業とは何か」と書いてあったが、「俺たちは何をしたいんだ」「何で社会に貢献するんだ」ということをもっと前面に出すべきではないか……ということだった。「あるべきこと」より「やりたいこと」が大事だという結論になった。
いまは「知識社会」ともいわれるが、「知識・感性社会」ともいわれる。ということは、「人の共感を得るビジョンでなければだめだ」ということだ。
「その会社のビジョンに共感して、その実現に参加したいという人が社員になる」「共感してその実現に一翼を担いたいと思う人がビジネスパートナーになる」「共感してその実現をサポートしたいという人が、株主になったりお客様になったりする」――感性の時代とはそんな時代ではないかと思う。
「いいから買う」というより、「そこの企業の何かに共感した……だから買うんだ」というような世界が、感性社会ではもっと強くなる。そうなってくるとビジョンがすごく大事になってくる。
共感ビジョンは「To Be」(あるべき姿)ではない。だから自分たちがやりたいことを前面に出した方がいい。ただし、「全員が共感する」ということは絶対にない。でも誰からも共感されないよりは、一部の人にでも共感された方が勝ちだ。
実はPWCの社長として改革プランを出した時に、ある幹部が私に「これはすごくいいプランだけれど、ひょっとしたら社員の半分がいなくなるかもね」と言った。私は「いいよ。半分になっても。心が通じた人が残ったら、いったん減っても元へ戻すのは簡単だ」と言った。
企業がいい製品を作るとか、昔のパラダイムで見ていると間違いで、人に、社会に共感してもらえるようなことをやれるかどうかというのが大事だ。
坪田 平均的にいい製品を作るパナソニックではなくて、「これという個性的な製品を作るアップルになれ」ということですか?
倉重 アップルじゃない。スティーブ・ジョブズです。スティーブ・ジョブズにみんなは共感した。彼の生き方、彼の発想に。だからiPadがすごくなった。だから、スティーブのいないアップルはこれから大変だと思う。
他社にない環境を作って人を育てる
坪田 倉重さんは「モノづくりからコトづくりへ」、「アルゴリズム型からヒューリスティック型へ」と言われていますが、いつごろから「こうあるべき」と思っていらっしゃるのか?
倉重 ヒューリスティックという言葉を使いだしたのは1年半前ぐらいからだ。たまたまその言葉を聞いた時に、自分の言いたいことを全部表現していると思ったので飛びついた。
一番のポイントはPWCに行くと決めて、大前研一氏に会いに行った。彼に「何かサジェスチョンはないか?」と聞いたら、「サジェスチョンはないが、あなたがびっくりするような話を一つ教える」と言った。それが「コンサルティング会社は離職率が25%もあるぞ」という話だった。
PWCに入って、「離職率は?」と聞いたら24%だった。私から見ると、それは絶対に許せない。経済的に採用費はかかるわ、トレーニング費はかかるわ、せっかく育って、「これから」と思っていたらいなくなってしまう。これはどう考えても経済的にも精神的にも許せない。
そこからなんですよ、「出来のいい奴ほどこの組織にとどまる」――そういう組織ってどんな組織だって考え出したのは。それまでは、日本IBMで考えていたのは事業戦略ばかり。お客様をどう囲い込むかとかばかり考えていた。今ここで言っているプラットフォームを考えたことはなかった。「そういう職場環境というのはどうしたら作れるのだろうか」と考え始めた。
いろいろ考えたが、結論は単純だった。「この環境で仕事をしているから今の自分のパフォーマンスが出せているんだ」と思う社員は絶対出て行かないと。ほかにない環境を作ればいいじゃないかと。デジタル化も徹底して進めてやろうと。人事制度もほかの会社が学びにくるような人事制度を作ってしまえば、その制度から離れたらしんどくなると思うじゃない。人事制度、IT、オフィスも他にないモノをつくればいいというところに行った。そうすると気がすっと楽になって。
どうせ、会社も小さくて宣伝もできないし、広告費も出せないから、他の社がやってないことをやっていたら、マスコミが取材に来るだろう。それは自動的に宣伝ではないか。そういうことでプラットフォームという考えができてきた。
坪田 そうするとビジネスプラットフォームが重要だという考えは最近なのですか?
倉重 いや、ビジネスプラットフォームという考えを、この20年間、どうあるべきか、それを進化させてきた。最初のプラットフォームをバサッと変えたのがPWCの最初の時だった。今のグローバルなビジネス環境ではスピードとリスク管理がキーですよ。グローバルなビジネスにおいては、新幹線のスピードだ。従来は在来線のスピードだった。新幹線は在来線の線路では走れない。そのことを外に対して言い出したということです。
たまたまBPIAがあって、「いまさらプロセスでもないだろう」と、おなじ「P」で「プラットフォームだろう」と、名称変更を決めた。
「感性」を「知識」と組み合わせる
坪田 これまで、「人、モノ、カネ」が三大経営資源といわれ、特にカネとモノが重要で、人はそれに従属していたように思う。それが、人を前面に立てて、カネとモノでサポートして行く時代になったということですか?
倉重 その通り。それは何かというと、お金より重要な資源が出てきたからだ。それは「知識」だ。知識というのは人がいなければ成り立たない。いままでのアルゴリズムの時代は設計されたプロセスを実行できる人が社員だった。ヒューリスティックな時代では、「どの知識とどの知識を組み合わせて何を創り出すか……ということを考えるのが社員の役割だ」ということに変わってきた。
坪田 「知識が重要」というのはダニエル・ベルやドラッカーの時代から言われている。今の「知識」は感性と組み合わされるものではないかと思うが。
倉重 感性は言い方を変えると「センシティビティ」だ。センシティビティを磨くということは、端的に言うと「ビジネスから遠いことをやる」ことなんだ。自然に触れるとか、文化に造詣を深めるとか。
ビジネスのアルゴリズムの世界をグルグル回っていたって感性なんか磨かれない。ということになると、やはり知性があって、優しさのような感情があって、気遣いみたいなものがあって、IQがあってEQがあって、最後に残るのがSQだとクレディセゾンの林野社長はご著書「BQ」で主張されています。私は全く賛成です。Sはセンシティビティ。インテリジェンス、エモーションがあって、センシティビティがあって、それを組み合わせたものがBQ。ビジネスであると。そういう意味で、我々自身が感性というものをもう一度考えなければいけない。だからライフワークバランスなんだ。
江戸時代はストラクチャー化されていない。アルゴリズムではない。戦後、日本はものの見事にアルゴリズムを作り上げた。それは製造業を中心に立て直したからだ。工場はアルゴリズムの塊だから。80年代の中ごろまで、それで大成功してきた。それはそれでものすごく意味があった。
坪田 産業革命は「機械文明」をもたらした。労働装備率でみると、鉄道や電力会社は1人当たり1億円を上回る。従業員が大変な設備コストを背負って仕事をしてきたのが、「機械文明」の時代だった。一方で、ゲーム会社や楽天は数百万円。「これからは『人間の時代』なんだ」と気づきはじめたのが2000年前後ではないか?
倉重 いいものを作っても売れなくなったのが20年前。今、「共感」とか「心」とか言っているのは、情報技術の進展があったから。なんだかんだと言ってもインターネットですよ。アナログの時代の個人は情報をほとんど取れなかった。今は誰でもがどんな情報でも取れる。それこそがインターネットの威力だ。人々が賢くなった。
坪田 80年代までは、効率を上げることがITを使う基本だった。しかし、今のITは効率より「感性のIT」になっているように思う。ITをいかに人間らしく使うかということで、ITの姿がかなり違うように思いますが……。
倉重 今のITは個人市場を目指している。個人市場を相手に技術革新が起きている。そういう意味ではITが本物になってきたと言える。もし、80年代までの経済成長がそのまま続いていたら人間は違ったものになっただろう。
民主主義というのは社会の維持コストが高い。それを購うには錬金術が必要だ。人類が編み出した錬金術は経済成長しかなかった。
今、民主主義が進んでいるのはG7の各国だが、その国々はほとんど経済成長が止まって、多額の財政赤字を抱えて困っている。そうした時に「自分たちは何を求めるべきか」を人々が考え始めたのも事実だ。だから「価値観を変えよう」という風潮が出てきている。ブータンが話題になっているのもその一つだ。
「人口が減っているのに経済が成長する」ということはあり得ない。IT自身が市場を縮小させている。
今起きているのは「シェアリング(共有)」だ。家のシェア、カーシェア。コンピュータのシェアはクラウドだ。こうした形で、どんどんデマンド(需要)を縮小させている。
私は1968年に日本IBMに入って、ビジネスの効率を上げることを支援してきた。経済が右肩上がりの時代には生産性を上げると、余った人を新たなオポチュニティ(事業機会)に振り向けることができた。それでより経済を成長させられた。
90年代以降、成長が止まった中で生産性を上げると、失業を増やすことになった。そこにロボットが出てきて、生産性アップではなく「代わりをやる」という世界になってきた。そういうことが進むと。「人間は何をするのか?」ということになる。ローマ時代はエンターテインメントに走った。それだけか? 本当に「人間の根源」に帰って議論しなければならない。
経営は「人」に頼らざるを得なくなる
坪田 倉重さんが「ビジネスプラットフォームが重要だ」と言われているのは、「人間が活躍できる舞台をきちんと固めるべきだ」ということですね。
倉重 これまでのアルゴリズムの世界は、だれかが設計したことをみんなで実行するという世界だった。「感性の世界」というのは、大きな市場がなく、市場が小さい。その小さい市場に対応する人の数が多い。いままでは、会社全体で一つの分野をめざし、一つのプロダクトを作ってやっていればよかった。今は小さな市場が100個ある。そうすると100人のリーダーが要る。それぞれのリーダーのところで自分の市場に対して何をするかを考えなければならない。
サービスという世界では、市場ではなくてお客様そのもの、個々のお客様に対して満足してもらうことを考えなければいけない。「誰かが考えたことをみんなで実行する」というのとは全然違う。
ということは、経営としては「人」に頼らざるを得なくなる。今までは「仕組み」に頼っていたが、「仕組み」が作れない。「人に頼る」以外にない。そうすると人の能力」と「人のやる気=モチベーション」・・・この二つをいかに高いところに維持するか――そのことに答えを見つけない限り、成功しない。
坪田 これから20-30年先に、ビジネスはどのように変わっていくのでしょうか?
倉重 頭の中から「国境」をとった者が勝つと思う。多くの企業経営者は、やはり日本にこだわっている。オリンピック選手ではなくて、国体選手だ。ビジネスの世界に比べスポーツの世界の方が進んでいる。スポーツの世界のことをビジネスは勉強すべきだ。
もう一つ、「企業」の壁を超える発想が大事だ。
いままで、企業というと、建物があって、「ここからここまではウチです」と言って他人を入れなかった。そういう感覚でいたらダメ。物理的にどこまでがウチの会社か、どこまでがウチの社員かわからない状態に持っていかないとこれから先の経営はうまくいかない。
企業は、製品を買ってくださる人を「お客様」という。人気商売だと「ファン」という。サッカーは「サポーター」と言っている。どれが一番距離が近いかと考えると「お客様」が一番遠い。お客様を「サポーター」にしていかなければならない。
BtoCの企業は本当の意味で、お客さんを知らない。私がiPhoneを買ったからと言って、スティーブ・ジョブズは会いに来ない。本当のお客様はBtoBだ。BtoCの企業の相手は市場。市場を知るにはインドでもインドネシアでも、現場に出ていかなければならない。コマツの経営者は、世界中の鉱山や建設現場に明日を運んでいる。だから建設機械にGPSをつけるという発想ができた。
坪田 いいサービス、いいクオリティの製品を出していこうとすると、働く人間のやりがい、能力をきちんとサポートしていかないとダメだということですね。
倉重 それには「勉強しろ」とか「研修センターを作る」とかではダメだ。本人がその気にならなければ。そのためには「やりたいこと」を持つということ。自分がやりたいことを持っていれば、「勉強しろ」と言われなくてもやる。
最近、ヤマト運輸の経営者の話を聞いて感心した。宅急便を始めた小倉昌男さんはすごいなと思った。それは「あるべき姿を追求する時は、フィジビリティ(実行可能性)を考えない」ということだ。
「こうあるべきだ」という姿を思い描いたら、それを実現するために何をするべきかを考えるというわけだ。
単年度計画はフィジビリティ=実行可能性を考えなければならない。5年先のことは戦略として考えなければならない。フィジビリティを考えても意味がない。日本の企業の大半は3年計画でやっている。これでは戦略を考えるのか実行可能性を考えるのか、中途半端だ。私は3年計画はやめるべきだと思っている。
ある会社で、「30年計画」というのをやっている。この会社は、30年前の街の様子とかの写真を集めてきて、今と比べて信じられないくらい変わっていることを認識させた。見せられたとたん、視野が広がった。そこで30年後を考えようとしている。
デシジョンのスピードを速くする3つの方法
坪田 さきほど「スピードが大事だ」という話をされましたが、特にどういう点ですか?
倉重 一番気にしなければならないのは、デシジョンのスピードだ。
日本の会社は民主主義で、誰が決めたかをはっきりさせないようにする。官庁がそうだから。
デシジョンのスピードを速くする方法は3つある。一つ目はデレゲーション(権限移譲)だ。ところが、今はデレゲーションしてもその先が見えない。内部統制がデレゲーションに反対している。それなら次のステップは「可視化」だ。可視化したら、安心してデレゲーションできる。
もう一つ、可視化のメリットは、経営者に「情報が足らないから今は決められない」と言わせないことだ。
3番目は「60点の答案で組織を動かせ」ということだ。なぜ経営者がデシジョンするかというと組織を動かすため。組織は動いたらラーニング(学習)を始める。ラーニングを始めて、必要な修正を加えていく――それが一番いい結果にたどり着く早道だ。時間をかけて100点の答案を作って組織が待っているという状態よりマシだ。
結局、経営は度胸だ。人を信用するか信用しないかも度胸だ。度胸のない経営者は務まらない。
<傍白>
倉重会長については、1980年代、日本IBM副社長のころから何度かお会いしていた。物事に正面から斬り込むタイプの経営者で、論理が明快だという印象がある。今回のインタビューでも、「今、日本の経営に問われていること」に真正面から答えていた。
確かに、右肩上がりの時代が終わり、今後は「人間中心の経営」にならざるを得ない。長年の企業経営の経験に裏打ちされた「アルゴリズムの経営からヒューリスティックの経営へ」という考えは説得力がある。
日本では、正規雇用の減少、非正規雇用の増大が問題になり、「人を育てる」という日本的経営の中核が大きく揺らいでいる。そうした点からも、すべての企業は足元である「プラットフォーム」を見直す必要があると感じた。