レポート

【レポート】第14回 The業務改革セミナー 

日 時:2014年6月12日(木)16:00-19:00
場 所:市ヶ谷 アーク情報システム
テーマ:「駐輪場・駐車場運営の効率化を目指して~当社のIT活用事例」
講 師:海老沼 孝二 芝園開発株式会社 代表取締役 <案内>

レポート:田岡 賢輔 富士ソフト株式会社

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芝園開発株式会社様は、東京23区北東部を中心に駐輪場・駐車場の運営事業を展開している企業です。

元々は土木建設業として事業を開始。現社長の海老沼氏が収益に波がある土木建設業より安定した収益が期待できる事業として、平成7年に時間貸駐車場運営事業に、平成10年より本邦初の無人機械式時間貸駐輪場システムを開発し、駐輪場事業を展開し始めました。

駐車場運営事業を開始した当初は、駐車場が不足していたこともあり、非常に高収益な事業展開が出来ました。また、時間貸駐輪場事業も、放置自転車問題解決の切り札として順調に拡大を続けていました。

しかし、平成18年の道交法改正で、民間での駐車違反取締まりをきっかけとして、駐車場事業への参入が急増。駐車場施設が過剰となり、料金のダンピング競争が激化します。また、ガソリンの高騰による車の乗り控え、さらにリーマンショックが追い打ちとなり、収益は悪化して行きます。ついに、平成20年には決算が経常赤字に転落する事態に至りました。

収益を回復し、利益を確保できる企業にするためには何に取り組む必要があったか。

そしてどう取り組んでいったか。

問題は業務の運営の仕方にありました。
・施設を管理するためのマスターデータが整備されていない。
・コールセンターからの報告はFAXを人手によって処理。
・そのためタイムリーな対応が散れず作業の漏れ・放置が多発。
・施設の収支・利用状況はデータをかき集め人手で処理。
・それもExcelでのどんぶり勘定のデータで信頼できない。
・新規施設開発のための情報が散在しており活用できない。
等々、問題は山積でした。

これらの問題を克服し、目指す姿は、
・利益を確保出来る施設管理体制の構築。
・施設ごとの収益把握を徹底して行い、必要な対策を迅速に取れること。
・情報に統一性を欠きバラバラに行われていた業務を効率化すること。
でした。

もちろんこれらを実現するにはそのための情報システムが必要になります。しかし要件も詳細には定まらない、また社内のマスターデータも未整備では、どこから始めるかも手探りの状態でした。

そこで、着手出来る部分からプロトタイプを作り、要件を明確にしながらブラッシュアップ出来る手法とツールによりシステム開発を始めました。富士ソフトのビジネス・イベント・マネジメントの考え方とFSBizTrustというツールです。

まずは施設の情報をマップ上から直感的に把握できる仕組みを作ります。マップ上で施設を選び、売上や利用時間等の精算機の情報を表示。監視カメラの映像もマップ上から見ることが出来るようなります。次にコールセンターからの情報をデータとしてシステムに取り込みます。対応が必要な施設とその状況がマップ上から把握出来るようになり、進捗管理も可能になりました。

さらに、会計データと精算機のデータを合わせて見られるようにして、施設ごとの収支状況を迅速に把握出来る仕組みを構築しました。競合施設の情報や、新規施設開拓のための情報もマップ上から活用できる仕組みも用意しました。

このように開発されてきた、芝園開発の駐車場・駐輪場統合管理システム「SHIP」は、既存のシステムには手を加えず、そのデータを最大限活用して業務を効率化するという考えのもと開発されています。こうして、各種の管理作業が大幅に効率化し、作業の漏れや放置をなくすことが出来ました。また、施設ごとの収支情報、競合の情報、新規開拓のための情報は経営拡大に大きく寄与しています。

ITを活用して業務や経営を改善するという取組により、近年は収益が改善し、2014年度の経済産業省・中小企業IT経営力大賞をいただくという結果に結びついています。

芝園開発のSHIPは現在も成長を続けています。また、大量に集まる精算機のデータや施設の問題のデータ等を分析して経営のさらなる改善・拡大に繋げる取組を始めています。