7月の研究会活動内容をレポートします。
EPUBマニュアル研究会はこの7月活動が最後となりました。
1. 開催日・時間:2015年7月21日(火) 16時より18時
2. 場所: ㈱ソフトウェア・パートナー 会議室
3. 活動課題
3.1. 効率的で効果的なマニュアルEPUB化について
-EPUBマニュアル研究会まとめ-
(木村 修三 片貝システム研究所)
3.2. CAS-UB今後の動向とEPUB化の動向
(小林 徳滋 アンテナハウス株式会社)
3.3. CUBE今後の動向と運用管理システムの動向
(天井 誠一 株式会社 ソフトウェア・パートナー)
4. 発表概要
4.1. 効率的で効果的なマニュアルEPUB化について
木村 修三 (片貝システム研究所)
4.1.1. 情報処理技術の動向
業務マニュアルのEPUB化を考える上で次の3点が重要である。
● モバイルファースト(モバイルを起点にしてサービスを作り上げること)
● クラウドサービス(HWやSWを手元に持たずNW経由で利用すること)
● IoT(Internet of Things(ものがクラウドに接続され相互に制御する仕組み)
モバイルファーストでは、スマートフォンとタブレットの活用が主となる。
クラウドサービスは次の3種類のサービス提供方法がある。
● Paas(Platform as a Service)
ソフトウェアを構築および稼動させるための土台となるプラットフォームを、インターネット経由のサービスとして提供
例:Amazon Web Services(21製品、1年間無償)、Microsoft Azure(全製品1ヶ月無償)、IBM Bluemix(自社各種製品30日間無料)
● Iaas(Infrastructure as a Service)
コンピュータシステムを構築および稼動させるための基盤(仮想マシンやネットワークなどのインフラ)そのものを、インターネット経由のサービスとして提供
例:Amazon Web Services (AWS) 、Google Compute Engine 、さくらのクラウド
● Saas(Software as a Service)
必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェア(主にアプリケーションソフトウェア)もしくはその提供形態
例:ERP(財務・会計、給与・人事、生産管理等、SAP,Oracle ERP)、CRM(Salesforce)、ワークフロー(サイボーズ)、イーラーニング(Moodle)
● IoT(Internet of Things)
従来はヒトの操作によってインターネットに信号が発信されていたのに、IoTはモノが自ら信号をインターネットに発信している 。全ての物にIPアドレスと電子回路が搭載される
IPアドレス:232から2128に拡張された、ICの微細化技術:5-10nmになるだろう
MtoM(Machine to Machine)機器間通信は2018年には20兆円市場(NTT.com)となる
電子機器に専用携帯番号、通信向けに「020」を開放(総務省)建機メーカーによる建設機械の稼働監視や、飲料メーカーによる自動販売機の補充管理などに利用される。
4.1.2. モバイル機器使用事例
No モバイル機器 団体名 利用事例
No | モバイル機器 | 団体名 | 利用事例 |
1 | iPad | 北見赤十字病院 | レントゲン画像をタブレットで閲覧 |
2 | iPad | あいの風とやま鉄道(北陸) | 車内指定席発券システム |
3 | 富士通製のARROWS Tab | 山崎製パン | 販売店の商品発注業務 |
4 | スマートフォン | 日本通運 | リアルタイムでトラックの走行位置やドライバーの作業状況を管理 |
5 | iPad | 広島大学病院 | 入院患者の診療支援 |
6 | iPhone 5S | ファイザー | MR(医薬情報担当者)支援システム |
7 | iPad | みずほ銀行 | 営業支援システム |
8 | Android | 三菱東京UFJ銀行 | 営業支援システム |
9 | Windows | 三井住友銀行 | 営業支援システム |
4.1.3. 業務マニュアルと適用事例
業務とはくり返しのある仕事で、業務マニュアルは法律・業務分掌・社内規定から一つの業務の業務内容と役割分担・権限、作業手順を記したものである。
業務手順書は指定された業務を完了するための手順を記したものである。
(複数組織、複数人数で行うものから1人で行うものまで)
業務マニュアルのEPUB化の目的はモバイル機器を起点とした業務の業務マニュアルはPDFやHTMLのマニュアルよりモバイル機器での閲覧性に優れたEPUBマニュアルが最適と考えその具体的な方策を詰めることである。
EPUB化したマニュアルの事例に次のようなものがある
給食従事者の作業管理マニュアル
飲食店接客業務マニュアル
旅費業務マニュアル
危機管理マニュアル
災害活動マニュアル
消防訓練マニュアル
更にEPUB化の利点は次の通りである。
リフロー効果・自動目次ページ再計算
拡大・縮小機能(文字・図・表)
しおり・メモの挿入と自動目次表示
4.1.4. 現行業務マニュアルの原稿整理 (マニュアルのEPUB化を効率よく進めるために)
● Wordファイル
通常ファイル(印刷前提)->スタイル設定、段落修正
複雑なファイル->再編集
スタイル設定完了->そのまま
● PDFファイル
簡単なファイル(印刷前提) ->そのまま
一般的なファイル->テキスト・画像切出し->Word
複雑なファイル->再編集->Word
● HTMLファイル
一般的なファイル->テキスト・画像切出し->Word
WordPress->XML出力しそのまま
複雑なファイル->再編集->Word
なお、詳細はマニュアルEPUB化ハンドブック2015版参照のこと
4.1.5. 業務マニュアルの編集
構造化文書にすること
企画・設計のポイント、原稿作成・ライティングのポイント、チェック・レビューのポイントなどはマニュアルEPUB化ハンドブック2015第2章を参照のこと
4.2. CAS-UB今後の動向とEPUB化の動向
(小林 徳滋 アンテナハウス株式会社)
4.2.1. CAS-UBの今後の計画
● CAS-UBは5月14日に大きな機能強化をしました
http://www.cas-ub.com/support/
● ヒント機能の充実
● 記事の続き―フォームの文字数限界でファイルを分割しているときEPUB生成時に結合する
● 現在、次のバージョンアップに向けて開発中
● 日本語の出版物の制作機能強化
● EPUB3については、大きな機能強化はなしで、小さな改善のみ
● PDFのレイアウト指定を強化 (POD)
● 今後のEPUBの機能強化は、EPUB3.1が見えてきたとき
4.2.2. EPUB NOW AND FUTUREより
● 2015年7月2日 国際電子出版EXPO関連イベントにて Bill McCoyさん(IDPF のCEO)の講演
● これからデジタル世代が主流に
● コンテンツ配信における、大きな課題はモバイル対応である
● EPUB3はHTML5採用でWebコンテンツとの親和性がある
● HTML5採用がターニング・ポイントであった
〈出典〉
● http://www.slideshare.net/JEPAslide/epub-now-and-future
● IDPF(International Digital Publishing Forum): EPUBの仕様を制定した業界団体
4.2.3. EPUBの普及
● EPUBは電子書籍のフォーマットとしてデファクトになった
● 出版物配布ではPDFより多い
● 今後はもっと用途を広げる(教育、科学技術出版(STM Publishing)、電子雑誌、企業の出版物)
● モバイルデバイス対応とアクセシビリティ対応が駆動力として
4.2.4. EPUBTEST (HTTP://EPUBTEST.ORG/)
● EPUBリーダーは種類が多い
OS(iOS、Android別、バージョン別で表示性能が異なる)
● EPUBリーダー別の機能比較表が作られたその中で最高点は? Adobe Digital Editions iOS版であった(90点)。但し日本製のEPUBリーダーは未チェック
● テストスイート(テスト用EPUBファイル集)
4.2.5. READIUM プロジェクト
● (今まで)リーダーの開発が中心 (リファレンス実装を目指す)
● Readium JS(Javascript版)
● Readium SDK(ネイティブ版) (?)
● 簡易なDRMシステム(Readium LCP)の提供
● その他の開発候補として
● オーサリングなども挙がっている
● 沢山お金を出したメンバーが成果の利用、発言力で有利になるモデルである
4.2.6. EPUB3.1
● EPUB 3.1 Revision Charter (https://goo.gl/TNvYEX)
〈課題〉
● EDUPUBのための機能拡張をEPUB仕様に統合
● 3.0以降の索引、辞書などの個別拡張仕様を統合
● EPUB-WEBの概念が持ち込まれる(かも)
〈日程〉
● 着手したばかり。1年半で公開する予定。
Q3 2015 and Q1 2016に作業、11月草稿第1版、 Q2 2016に決定
〈狙い〉
● コミック、科学、教育書、企業内書類など、さまざまなコンテンツへの対応を進める。
4.3. CUBE今後の動向と運用管理システムの動向
(天井 誠一 株式会社 ソフトウェア・パートナー)
2013年~2015年のSPスマートコンテンツ「CUBE」の開発、モバイル開発の状況をもとに、今後モバイルアプリがどのように利用されていくか考えていきたい
4.3.1. 2013年の実績
● CUBE
http://www.sp-inc.co.jp/product_contents/cube/
・ EPUB対応(データ抽出&検索&EPUBビュワー)
・ 医療関連の顧客に2013年7月EPUB 対応版をリリース
・ 建設販売の顧客に2013年1月CUBEを導入
→ マニュアルだけでなく、CUBEオプションの動画や写真管理も利用中
・ 中核エンジンのMicroWebServerの説明
https://www.youtube.com/watch?v=WXNRn0oSQhE&feature=related
・ CUBEマルチプラットフォーム対応の検討(Android、Windows、kindle)
● タブレット開発
・ 精密機械メーカー 作業管理システム リリース
4.3.2. 2014年の実績
● CUBE
・ Android対応 → 途中からWindows対応へ
・ 産業交流展2014に出展(韓国から引き合いがあった)
● タブレット開発
・ 精密機械メーカー 作業管理システム ホスト切替対応
・ 部品メーカー Accessシステムを全面刷新着手
・ 金融機関 証券申込確認システム
・ CUBEエンジンのMicroWeServer+ビーコン装置で、国のものづくり試作開発に認可された
4.3.3. 2015年の途中経過
● CUBE
・ 建設販売の顧客 日報機能を搭載
・ ITPro2015、産業交流展2015に出展予定
● タブレット開発
・ ものづくり ビーコン装置との連携(9月末終了)
・ 部品メーカー Accessシステムを全面刷新
70,000ステップ(Webでは月3,000ステップが平均)
・ 保険関連 保険料試算システム 着手
・ kintone連携 検討中
・ 衣料品メーカー 展示会システム 検討中
・ 東京都中小企業振興公社 2015/6にMicroWebServerが認定
4.3.4. 2016年以降の予定
・ タブレット、スマフォ開発で飛躍
・ ビーコン装置とモバイル連携の強化
・ Apple iBeaconの規格を提唱(2013/11/22)
・ Google Eddystone規格を発表(2015/07/14)
→ オープンソース、モバイル専用アプリ不要(URL対応)
・ GPSとのモバイル連携
→ GPSの誤差が数cmまで改善される予定
・ MicroWebServer本体の開発に特化
・ MicroWebServer専用サイト構築
http://micro-web-server.wix.com/product
4.3.5. その他
今回で3年にわたるEPUBマニュアル研究会が無事終了となりました。長い間、ご参加された皆様これからのEPUBマニュアルの普及とビジネスの成果を目指してご活躍下さい。当日取りました参加者全員の写真を添付いたします。今後とも仲間として協力をしていきましょう。
(EPUBマニュアル研究会 ナビゲーター 木村修三)
追記:参考書籍
「マニュアルEPUB化ハンドブック2015年版」 購入価格1,000円(kindle版)
(書籍はアマゾンより入手可です。) http://goo.gl/i2nno6
以上