Webビジネス研究会 レポート 研究会 2013年度 研究会/講演会

【Webビジネス研究会 】報告

テーマ: ネットショップ事業者必聴! 楽天グランプリ店舗が、セレクトショップに転身できた理由とは
ゲスト: 武田和也 桃源郷株式会社 取締役
2013年3月14日(木)16:00-19:00/オラクル青山センター

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皆様、こんにちは。BPIA・Webビジネス研究会ナビゲータの石田です。今回は、3月14日のホワイトデーにオラクル青山センターさんで開催させていただいた第8回Webビジネス研究会「楽天グランプリ店舗が、セレクトショップに転身できた理由とは?」についてレポートさせていただきます。
 
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第8回のゲスト講師としてお招きしたのは、桃源郷株式会社の武田和也取締役です。
 
武田さん(愛称:ますた)と私石田との出会いはもう7年ほど前のこと。当時、武田さんも僕も、ネットショップの業界に足を踏み入れたばかり、店舗運営のイロハもまだまだよくわかっていない時期のことでした。僕の前職の職場にバスケットボール経験者が多かったことから、時折恵比寿の体育館でスポーツ大会を開催しており、ネットショップ仲間であった桃源郷さんをお誘いしたところ、武田さんが参加されてきたのが出会いです。それから、お互い社内でマネージャーの立場になり、過去にはネットショップ仲間数社を集め、定期的な勉強会を催していたこともありました。今では、武田さんのお宅にお邪魔したり(武田さんは料理がとても上手!)、桃源郷のオフィスがある渋谷界隈の居酒屋でネットショップについての意見交換をする仲です。

そんな武田さんは、1973年7月福島生まれ。大学卒業後、桃源郷に入社するまで飲食店に勤務していたことから、「ますた」という愛称で親しまれています。ちなみに武田さんと僕は同じ大学、武田さんと僕の父親が同じ高校、ということでそのあたりにも不思議な縁が絡んでいます。2005年9月にアルバイトとして桃源郷に入社。2006年1月、新年初出社をした際に、「ますた今日から社員ね!」と勝手に社員登用されていたという、謎な経験の持ち主です。オークションサイト「桃オク!」の立ち上げや、採用統括、ネットショップのM&A業務などを歴任し、2011年7月に取締役就任。そして2013年、今年の7月に40歳になられるとのこと!ネットショップの会社で、40代の経営者って、意外と珍しいんですよ。(まだまだ30代が多い業界です)

武田さんが取締役を務める桃源郷株式会社は、2001年に岐阜県で創業。2003年からインターネットオークション事業を開始し、2005年に東京へ進出。2007年には、楽天市場のショップ・オブ・ザ・イヤー総合グランプリを獲得しました。歴代受賞店舗の中でも、桃源郷の総合グランプリ受賞は、実商売に母体を持たない「インターネットショッピング事業だけ」を行っている企業が唯一獲得した非常に価値のある記録なのです。これは2008年以降の受賞者を合わせても、桃源郷だけしか達成をしていません。本当に凄いことなのです。

2008年にNECビッグローブと資本提携。2011年、オークション事業からセレクトショップ事業に舵を切り替え、現在では15のブランドを抱えるネットショップ企業になっています。楽天市場の総合グランプリまで受賞したオークション事業に見切りをつけ、なぜセレクトショップ事業に切り替えたのか、またなぜ短期間でセレクトショップ事業を軌道にのせることができたのか、それが今回のWebビジネス研究会のテーマです。

桃源郷が現在のセレクトショップ事業に注力するスタイルに変わったことには、転機がありました。2008年の「NECビッグローブとの資本提携」、2011年の「3.11東日本大震災」。このふたつです。

まず、2008年、桃源郷はNECビッグローブと資本提携をしたことにより、資本力が強化されました。これにより、ネットショップのM&A戦略をスタートすることが可能になったわけです。2009年、2010年と他社からネットショップ事業を譲受。いずれの事業も順調に推移し、M&Aによる事業拡大への手ごたえを掴みました。そして、さらなる多店舗化、事業拡大のため、2011年3月に事務所の移転が決定、2012年度の新卒社員入社が決定していましたが、

しかし・・

2011年3月11日、東日本大震災が起こりました。これにより、楽天市場のメールマガジンは緊急の配信停止に。震災前はネットショップが保有しているメールアドレスについて「無料・無制限」での配信が可能でしたが、2011年秋の決定で、「週1回の配信のみ無料」という決まりに。それ以上のメールマガジン配信は有料のため、今までの店舗運営と同じスケジュールで配信すると、メールマガジン配信費用は、驚愕の5000万円に・・。この数字はなんと、桃源郷オークション売上の50%!そして、当時のオークション総販促費の15倍!
これで、メールマガジン配信を戦略の大きな手段としていた桃源郷オークション事業が完全に崩壊したのでした。

桃源郷の事業全体でも圧倒的な売上を誇っていたオークション事業が崩壊・・広さも賃料も3倍の事務所に引越し、すでに新卒社員5名の内定も出している(ちなみに当時の桃源郷社員約30名という中での大増員だった!)・・もちろん、他のショップでは、オークション事業の失われた売上をまだまだ十分に補えない・・。大規模なリストラを断行し、事業規模を縮小するか。失われた売上を補填するために、拡大路線を加速させるのか。桃源郷が選択したのは、ブレーキではなく、アクセル「全開」でした。

2011~2012年の間に、9ブランドのセレクトショップを新たにオープン。組織構造とシステム構造も、セレクトショップ事業のより加速的な拡大を実現できる体制に改善してきました。多店舗展開を成功させるためのキーポイントとして、資金力はもちろん、組織構造・システム構造、様々なショッピングモールに対応するための仕組みが重要であるとのことです。

では、セレクトショップをつくるとき、どんなショップを展開するのか、コンセプトはあるのか。それについては、武田さんが表現するに「あえて言おう、ニッチであると」。それはなぜかと言えば、ECだからである、と。つまり、ECの特徴として、「商圏の限界がない」「比較・移動が容易である」点から、「1位が全てを獲るマーケット」であり、価格が一番安い店舗や、品揃えが勝っている店舗だけが売れやすく、このステージで戦うならば、大資本が圧倒的に有利。となると、勝負は局地戦。ニッチなマーケットで「オンリー1・ナンバー1」を獲るしかない、ということです。

桃源郷が運営する女性ライダー向けバイク用品のネットショップ「バイコ」や、ギャル向け家具のネットショップ「ガーリーアパートメント」、山ガールファッションのネットショップ「アルココ」などを、特にニッチなマーケットを狙っているショップとしてご紹介していただきました。

このように、桃源郷はECであるからこその制約を逆手に取り、実店舗の常識ではありえない狭いセグメントのユーザをインターネット上で獲得しているわけです。近年、インターネットユーザの検索リテラシーが向上していることも、スイッチコストの最小化に寄与している、というお話でした。

今回、武田さんのお話をお聞きし、戦略・組織構造・システム構造含め、「自分達で考え、自分達で決め、自分達で実行する」ことの大切さを再認識しました。戦略に合った最適な構造を自分達で作ったからこそ、短期間でオークション事業からセレクトショップ事業への方向転換が成功したのだと思います。それにしても、オークション事業が最盛期の50分の1の売上になってしまった、という事実はすごい。震災後も武田さんにはしばしばお会いしていましたが、ニコニコ笑っている裏で、そんなことが起こっていたとは思っていませんでした。

第8回Webビジネス研究会、いかがだったでしょうか?

今回もたくさんの方にご参加いただきました。多くの方に懇親会までご参加いただき、本当にありがとうございました。また、研究会後には、オラクル青山センター最上階の、お茶室も拝見させていただきました。

さて、次回はのWebビジネス研究会は2013年の5月14日(火)16:00~、ゲスト講師にロジザード株式会社の遠藤八郎会長をお招きします。
物流在庫管理システムを提供し、ネット通販の会社とも広くお付き合いのあるロジザードさん。遠藤会長の長いIT業界での経験から、今のWebビジネスをどう見られているのか、深くお聞きしてみたいと思っています。場所は市ヶ谷のアーク情報システムさん会議室にて、開催させていただきます。お間違いなく。

最後になりましたが、ゲスト講師の武田さん、ご参加していただいた皆さま、会場をご提供いただいたオラクルの宇木さん、BPIA事務局の青山さん、臼井さん、誠にありがとうございました。感謝します。

それではまた5月に、お会いしましょう!
 
 
◎桃源郷株式会社
http://www.tougenkyou.org/

◎Webビジネス研究会
https://bpia-box.com/?p=1076

◎レポート 石田麻琴 株式会社ECマーケティング人財育成 代表取締役社長

<いしだ・まこと> 早稲田大学第一文学部卒業後、インターネット通販ベンチャーに6年間勤務。ネットショップ店長として、仕入・マーケティング・システム構築・物流などを1人でこなし、1年間で売上7,000%アップ、年商3億円を実現。インターネット通販を中心としたマーケティング支援/マーケティング人財の育成を目的とした株式会社ECマーケティング人財育成を設立。有力EC/Web企業を支援。船橋情報ビジネス専門学校特別講師など人材育成にも注力。その他、商工会議所での講演、新聞やWebでの連載など。
ご紹介;連載中のITMediaエグゼクティブコラム(http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1302/13/news013.html