テーマ: インターネットはビジネスをどう変えたか? 業界44年のロジザード会長が語る、昨日・今日・明日。
ゲスト: 遠藤八郎 ロジザード株式会社 会長
2013年5月14日(火)16:00-19:00/アーク情報システム
皆様、こんにちは。BPIA・Webビジネス研究会ナビゲータの石田です。今回は、5月14日に市ヶ谷のアーク情報システムさん会議室で開催させていただいた第9回Webビジネス研究会「インターネットはビジネスをどう変えたか? 業界44年のロジザード会長が語る、昨日・今日・明日。」についてレポートさせていただきます。
第9回のゲスト講師としてお招きしたのは、ロジザード株式会社の遠藤八郎会長です。
遠藤会長と私石田は、BPIA・目からウロコの新ビジネスモデル研究会ナビゲータである片貝孝夫さんのご紹介でお知り合いになりました。それからのお付き合いです。昨年、ロジザード株式会社で石田が勉強会を開催させていただいたこともあります。
今回のWebビジネス研究会では、IT業界で長く活躍されている遠藤会長に、インターネットビジネス(Webビジネス)だけではなく、「インターネットを使ったビジネスが生まれるまで」も語っていただこう、というわけです。
ロジザード株式会社は物流在庫管理システムを提供しています。企業名でもあり、製品名でもある”LOGIZARD”は、楽天市場やヤフーショッピングの有名ネットショップや、大手企業の独自ネットショップ、多数の中堅ショップに600社以上の導入実績があり、業界では圧倒的なシェアNo.1となっています。
物流に、ITそしてクラウドサービスが活用されてから、リアルタイムに物流・在庫状況が共有され、正確でスピード感がある動きが実現されるようになりました。企業ごとに受託請負で個別に物流システムを構築していた時代には、数千万円~数億円も開発費用がかかっていたものです。ASP化によって複数企業が共同で利用できる低コストの物流ITサービスが実現されました。
物流業界は、重い荷物やたくさんの荷物を運ぶ、物理的な運搬道具の発達を利用して発展してきましたが、ITを活用することによって、今まで手処理をしていた伝票作業などもスピーディに正確に対応できるようになりました。機械化という”力”だけではなく、コンピュータという”頭脳”を手に入れたことによって可能になったわけです。
“仕事の目的は不変だが、技術は変わり主役が変わる”と遠藤会長は言います。
技術は突然には変わらない。開発が徐々に進み、ある時製品化されるが、初期は課題があり直ぐには社会に浸透しません。しかし、本質的に良いモノは改善導入され、必ず主役に踊りでます。経験やノウハウは、保守的で新しいモノを拒否します。物流業界に限らずとも、IT業界も同様に技術者ほど保守的です。固い殻を破るには、事業(顧客の役に立つ)に対する信念が必要である、というわけです。
コンピュータ技術の歴史から観て、クラウド化は大きな時代の流れにあります。ハード主導時代は、半導体の驚異的な進歩(速くと小さく)にささえられた知識集約型産業(ムーアの法則)でしたが、1971年のIBMアンバンドリングを契機として、ソフト主導時代に変わりました。クラウドに知恵と知識を蓄積・集約していくことで、ソフト産業もムーアの法則に似た、知識集約型に変革される時代になったということです。ここからコンピュータを個人が所有できる時代になっていきます。
技術革新とは、”矛盾を克服して、新しい次元の製品や機能を提供すること”であり。その前提として、”速さと正確さは矛盾する”という概念との戦いがあります。コンピュータとは、それまでの機械における”筋力”の道具ではなく、”脳力”としての道具。そして、インターネットは、”コンピュータと高速通信が融合し、人類の知恵と知識の保管と流通”に革新をもたらしました。
インターネットが現れてから、産業が全体としては成長を続けていますが、激しい淘汰の波や嵐がきていることも事実です。
大型コンピュータ時代(巨艦大砲)の終焉があり、半導体の驚異的な高集積・高速化が進みました。パソコンやスマホ、タブレットはこの技術進化の産物です。オープン化、ネットワーク(LAN)、マルチメディア化が進み、インターネットの時代が訪れました。ネットワークが社内だけではなく、世界に広がったということです。
そして、クラウドの波。企業の基幹業務機能もインターネットサービス化する時代になりました。生産管理、販売管理、物流、会計、その他の各種クラウド/SaaSの連携環境を利用し、大きな<開発なしで早く必要なIT化ができるようになりました。もちろん、共通システムで対応できずに企業個別のシステム構築案件は残りますが、時間と高コストで旧態の労働集約型の開発となります。
インターネットの登場により、開発からサービスにビジネスの方向が動いてきました。開発側はユーザよりも業務について深い知識やノウハウを持つ必要があり、それが付加価値へと結びつきます。また、全てのユーザの満足を叶えるのは不可能なので、ターゲットを絞ることも重要です。サービスを有償化し、優れた運用方法をコンサルティングしたり、定常の運用サポートを行うこともビジネスになりました。広告モデルに代わる収益構造も生まれています。そして、インターネットの活用により、業務によっては国を超えたサービスも可能です。GoogleやAmazon、facebookなどは、インターネットを活用できた企業、ということです。
また、遠藤会長が長く経営をされてきた中での気づきを語ってくれました。
経営成果=志*夢*執念
長い歴史のある企業は、この3つが、高く、大きい、強い、と言う事実があり、大きな時代の波にも耐え、変化にも対応してきています。
志 定性的計画:事業内容がどれだけ社会に貢献するか(高さ)
夢 定量的計画:どれだけ多くの企業や人に利用されるか(大きさ)
執念 幾度の失敗をあきらめないこと(強さ)
また、クラウドサービス事業とは、非常にシンプルな形態である。
ユーザ数が、そのサービスの総合評価です。
“コスト+機能性能+サポート=ユーザ数”
売上は、ユーザ数に一定の金額を乗算します。
“ユーザ数*利用料金=売上”
コストはシンプルです。
“共通基盤のコスト÷利用ユーザの数=利用者単位コスト”
(共通基盤のコスト:サーバ投資 減価償却、IDC利用料金、サポート費用)
遠藤会長はITの黎明期から40年以上、驚異的な技術進展と多くの企業の栄枯盛衰を目の当たりにしてきました。ここに経営者として関わる機会を得たことに感謝し、運の良さを感じていらっしゃいます。最後に、遠藤会長のご自身に向けての問いを、そのまま記載します。
Q1.経営とは何だろうか?
A1.「正解など有りえない。」と思うが、私は同友会を始め多くの優れた経営者から、優劣等に関係無く「人を活かす」ことができたら会社は成長することを学びました。
Q2.仕事とは何だろうか?
A2.これも正解は幾つもあるが、自分の能力を最高に発揮できたら幸せなことです。私は好きなことを仕事にしたらから、とても幸せです。知っている、分かっている、出来る、、、次は?
Q3.人生とは何だろうか?
A3.企業は仕事のやり甲斐を作り、生き甲斐は各個人が作るものである。
私石田が初めてパソコンに触れたのは、大学1年生の時、1999年でした。姉が友人に作ってもらった自作のパソコンでした。その頃は、ネットスケープで検索をし、物販と言えばヤフーオークションの時代でした。その後、僕はネットショップの運営企業に入社するのですが、ずっとインターネットは”すでにあるモノ”でした。
パソコンやインターネットの登場、そしてそれに付随する技術の向上はいかに驚異的なものだったか、今の一時点を見ているだけではわかりませんが、遠藤会長のお話を聞いて、とても理解することができました。
Webビジネスというと、日本ではYahoo!や楽天市場、世界ではGoogleやAmazonが席巻していますが、これからの技術革新によって、いつか次の主役が現れてくるのでしょうか。今や飛ぶ鳥を落とす勢いのLINEも1年前を思い出せばまだまだだったわけですから、主役の登場は意外に早いのかもしれません。自分がその主役を生み出せたら・・・とも、もちろん思いますがどうでしょうか。
第9回Webビジネス研究会、いかがだったでしょうか?
今回もたくさんの方にご参加いただきました。多くの方に懇親会までご参加いただき、本当にありがとうございました。
さて、次回のWebビジネス研究会は2013年の7月18日(木)16:00~、ゲスト講師に株式会社KAJINの林志英社長をお招きしています。
子供用フォーマル服のインターネット通販で有名なKAJINの林社長。今月の12日には初エッセイを出版される、いま最も注目の女性経営者のおひとりです。
最後になりましたが、ゲスト講師の遠藤会長、ご参加していただいた皆さま、会場をご提供いただいたアーク情報システムさん、BPIA事務局の青山さん、臼井さん、誠にありがとうございました。感謝します。
それではまた7月に、お会いしましょう!
◎Webビジネス研究会
https://bpia-box.com/?p=1076
◎レポート 石田麻琴 株式会社ECマーケティング人財育成 代表取締役社長
<いしだ・まこと> 早稲田大学第一文学部卒業後、インターネット通販ベンチャーに6年間勤務。ネットショップ店長として、仕入・マーケティング・システム構築・物流などを1 人でこなし、1年間で売上7,000%アップ、年商3億円を実現。インターネット通販を中心としたマーケティング支援/マーケティング人財の育成を目的と した株式会社ECマーケティング人財育成を設立。有力EC/Web企業を支援。船橋情報ビジネス専門学校特別講師など人材育成にも注力。その他、商工会議 所での講演、新聞やWebでの連載など。
ご紹介;連載中のITMediaエグゼクティブコラム(http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1302/13/news013.html)