【レポート】
こんにちは。BPIA広報委員会の石田です。今回は4月14日(水)にオンラインにて開催されたBPIA例会についてレポートします。
今回の例会では「食品業界を変える『サステナブルフード』」と題し、日経BP社日経ESG編集シニアエディター、富山大学客員教授の藤田香氏にご講演いただきました。
藤田氏は、日経エレクトロニクス・ナショナルジオグラフィック・日経エコロジーなどの編集をご経験後、日経ESGのシニアエディター、日経ESG経営フォーラムのプロデューサーを担当されています。子どものころから、「自然・人・地方創生」に関心があり、その根底には生まれ故郷である富山への愛があるようです。
さて昨今「サステナブル」という言葉をよく聞くようになりました。サステナブルな社会をつくる、サステナビリティ経営などの言葉を使うことも多くなりました。「ESG」とは、「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の頭文字をとったものです。その中でも話題になっているひとつが「サステナブルフード」です。
サステナブルフードの議論が高まってきた背景は、地球の人口爆発があります。全世界97億人を食べさせるだけの食料があるのか、その食料をつくるために耕地を用意したり家畜を育てるためには温室効果ガスの排出量が大きいというのです。元々の地球上の食料の量が足りなくなるだけではなく、新しい食料をつくろうにもさらに地球環境を悪くする状態にあります。
たとえば人間に必要であるタンパク質をつくるための牛肉は土地や水を大量に使います。それに比べて昨今話題になっている昆虫食は同じタンパク質の量をはるかに少ない資源で生産することができます。これが昆虫食の良いところです。食品を生産するシステムから排出される温室効果ガスが世界の全排出量の3割を占めていることからも、サステナブルフードが必要であり、地球環境への負担を減らしながら世界人口に食料を提供する「量:安定供給」「質:環境や社会面に配慮」の両面が期待されています。
サステナブルフードの取り組みと課題の解決策として藤田氏は3つご紹介してくれました。
ひとつは「植物肉、代替肉」です。肉を大豆やエンドウ豆に置き換える方法なのですが、昨今食品メーカーが次々と市場に参入しており、味も以前に比べるとかなり肉に近づいています。欧米では代替肉の新興企業が続々し、今後「植物肉、代替肉」の市場は弱気にみても10年で10倍になるのではないかと予想されています。
ふたつ目は「認証を取得した商品」です。環境や社会に配慮して生産された食品を証明する第三者認証を取得した食品の提供です。すでに水産物、野菜、コーヒー、カカオなどに認証の仕組みが活用されています。パナソニック、損保ジャパンなど、社食として「サステナブルフード」を出している企業もあります。
みっつ目は「トレーサビリティの証明」であり、ここは法律としても取り組みが始まっている部分です。食品の来歴を証明するためブロックチェーン技術が活用され、たとえばネスレではQRコードをスキャンすると焙煎や取引、栽培地など、様々な情報がわかるようになっています。
実はカップラーメンに入っている肉は以前から大豆ミートだったようで、サステナブルフードの話題が出てからカップラーメンの製造会社が「実は大豆ミートなんです!」を明かしたという話が非常に興味深いものでした。塞翁が馬感もあって面白いですね。
最後になりますが、藤田様、例会担当の田村さん、BPIA事務局の川上さん、誠にありがとうございました。
【開催概要】
日時 | 2021年4月14日(水) 9:00〜10:30 |
---|---|
開催方法 | Zoom ※URL等情報は、お申込みいただいた皆様へ別途ご案内いたします |
タイトル | 食品業界を変える「サステナブルフード」 |
講師 | 藤田 香 氏 (日経BP 日経ESG編集シニアエディター/富山大学客員教授) |
対象 | BPIA会員限定 |
進行 | 田村 俊和(BPIA理事 例会担当/株式会社日経BP読者サービスセンター 代表取締役社長) |
※「例会」は、BPIA会長、会員経営者、又は外部経営者知見者を講師に招き、グローバル時代の経営を様々な視点で議論し、相互研鑽とビジネス交流を図るBPIA会員限定の勉強会となります。
◎講演概要
世界人口は2050年に97億人に達すると予想され、食料安全保障の問題が深刻化しつつあります。地球環境への負荷を減らしながら、世界人口に食料を提供するため、「サステナブル(持続可能)な食」が求められています。解決のための取り組みが始まっています。1つ目は最近話題になっている「植物肉」「代替肉」です。大豆やエンドウ豆で肉のような味や食感を再現する食品で、環境負荷を減らせます。食品メーカーが次々市場に参入しています。2つ目は、環境面や社会面に配慮して生産された食品を証明する第三者認証を取得した食品。水産物や野菜、コーヒー、カカオなどに広がっています。さらに、食品の来歴を証明するブロックチェーン技術も活用され始めました。サステナブルな食にESG投資家の関心も高まっています。こうした動きを紹介します。
◎講師プロフィール
藤田 香 (ふじた かおり) 氏
日経BP 日経ESG編集シニアエディター/富山大学客員教授
富山県魚津市生まれ。東京大学理学部物理学科卒。日経BPに入社し、「日経エレクトロニクス」記者、「ナショナルジオグラフィック日本版」副編集長、「日経エコロジー」編集委員、「日経ESG経営フォーラム」プロデューサーなどを経て、現職。生物多様性や自然資本、持続可能な調達、ビジネスと人権、ESG投資、SDGs、地方創生を追っている。著書に『SDGsとESG時代の生物多様性・自然資本経営』など。環境省中央環境審議会委員、環境省SDGsステークホルダーズ会合委員、「東京サステナブル・シーフード・シンポジウム(TSSS)」共同プロデューサーをはじめ、国や自治体の委員を多数務める。聖心女子大学や東北大学の非常勤講師、富山大学客員教授。