Webビジネス研究会 レポート 研究会 2012年度 研究会/講演会

【第3回 Webビジネス研究会】報告

10年間のノウハウを“初”公開 ECにおける、『実用』データマネジメント。
ゲスト: 大場雅人 株式会社バージンダイヤモンド コマース事業部 部長
2012年3月13日(火)16:00- / アーク情報システム(市ヶ谷)

レポート:研究会ナビゲータ・石田麻琴

 

こんにちは。BPIA・Webビジネス研究会ナビゲータの石田です。今回は3月13日にアーク情報システムさんで開催させていただいた、第3回Webビジネス研究会「10年間のノウハウを“初”公開、ECにおける、『実用』データマネジメント。」についてレポートします。

 

第3回はゲストに、株式会社バージンダイヤモンドの大場さんをお招きしました。研究会の冒頭でもお話しましたが、大場さんは僕にとってEC業界の大先輩。僕が前職についた直後からの関係ですので、もう7年ほどになります。大場さんが運営されているネットショップと、僕が運営していたネットショップが競合関係にあり、楽天のイベントやEC業界の集まりの度に、情報交換をさせていただいておりました。昨年、僕が前職を退職した後からは、「これからのEC業界はどうなるのか?」「どう盛り上げていけるのか?」「ECというものは、どう社会の役に立っていけるのか?」などを真剣に話しながら、よく食事をさせていただいてます。

 

 

株式会社バージンダイヤモンド(以下、バージンダイヤモンド)は楽天市場におけるトップ店舗の証である、ショップ・オブ・ザ・イヤーを4度受賞。この10年間、日本のジュエリーECでトップを走り続けているネットショップの1つです。

そのバージンダイヤモンドの一番の特徴は、ダイヤモンドを鉱山直結で仕入れることができること。一般のダイヤモンドの流通では、様々な企業や業者を通した後、お客様の手にダイヤモンドが渡ることになります。しかし、バージンダイヤモンドの場合、グループ会社がロシア連邦のサハ共和国において、天然ダイヤモンド原石を購入する権利を持っているため、鉱山から掘り出したダイヤモンドを直接仕入れ、お客様の手に届けることができる、というわけです。

バージンダイヤモンドがなぜ「バージン」なのか、それはこの「鉱山直結」。つまり、「誰の手にも触れられていないダイヤモンド」に由来しているわけですね。

 

バージンダイヤモンドが運営しているネットショップは主に2つ。天然のダイヤモンドをメインにした「銀座バージンダイヤモンド」とアクセサリー感覚のジュエリーをメインにした「アクアジュエリー」。両ネットショップとも楽天市場のショップ・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。昨年、新聞や雑誌等で話題になったのでご存じの方もいるかもしれません。プロポーズリング・待っててね貯金箱・誓約書・婚姻届・認印・朱肉・アラーム時計をセットにした、女性から男性に対して送る「強制入籍セット」を仕掛けたのもバージンダイヤモンドです。そういうユニークな一面もあるネットショップさんです。

 

 

ここで市場の整理をしておきましょう。大場さんからいただいた資料によると、日本のジュエリー市場におけるEC化率は、まだ3.3%程度ですので、他ジャンルのEC化率と比べれば、まだまだ開拓の余地があるだろうということです。

また、楽天市場についての情報ですが、出店店舗数が38,000店を突破。楽天会員が7,000万人を突破。流通総額1兆円を突破。そして、今年の3月4日の楽天スーパーSALEでは日商130億円ということです。数値の取り方やアクティブ会員数など、多少気になる部分もありますが、ここは中身云々ではなく事実として押さえておいた方がよさそうです。

 

 

いよいよ研究会の中身です。

今回の研究会で最も重要なポイント。それは、細かいノウハではなく、「ECなら『何が可能か!?』」「どうデータを活かすのか?」この2点だと僕は思っています。この2つを十分理解していただくことがとにかく重要です。主要指標の分析も、この2つの概念あってこそだと思います。

 

まず、大場さんはECと実店舗の違いを具体的に3つ挙げて、説明をして下さいました。

ECは、①営業時間・商圏・売場面積の制限がない。つまり、24時間世界中のどこからでも購入が可能で、しかもたくさんの商品を提案できる、ということ。②またインターネットを媒介するため、対面販売ではない。そして、③販売から派生するデータを取りやすい。

実店舗は逆で、営業時間・商圏・売場面積の制限がある。基本的には対面販売であること。そして、販売から派生するデータを取りにくい。というわけです。

 

ここを踏まえた上で、ECなら「何が可能か!?」ですね。

 

①営業時間・商圏・売場面積の制限がない。

利点としては、縦積み商材が実現できます。また、ロングテールがいくらでも可能ということです。欠点としては、競合店舗が実現したことが、標準になる。つまり、ネット上で競合を簡単に隅々までチェックできてしまう。ということです。

 

②対面販売はない(インターネットを媒介する)

利点としては、ある意味の自動販売機状態が作れること。成功パターンの複製や繰り返しが比較的可能で、容易であること。欠点としては、購買障壁が高いこと。個人情報やカード情報の入力や、商品を手に取れない・試着できない、どんな人がお店をやっているのかわからない、などのハードルがあります。

 

③販売から派生するデータを取りやすい。

利点としては、データ分析が容易にできること。欠点としては、数字がヴィジュアルで感覚的に処理しずらいこと。例えば在庫データも、エクセル上の数字で見るのと倉庫で現物を見るのでは感覚的な危機感が違います。

 

以上の3点の中で、大場さんに特に取り上げていただいたのが③です。

これが、今回の研究会のもうひとつの重要ポイント「どうデータを活かすのか?」ここです。

 

大場さんには研究会の中で具体的な主要指数として、売上・メールマガジン・広告それぞれにおける3つの公式をご紹介いただきました。

 

例えば売上についてならば、「『売上』をあげよう!」では何をどうすればいいのかわからない。主要指数のいずれかをいかにして上げるかを考える、ということが重要ということです。結果を数字で分解して、改善する。そして、結果を数字で計測して分解して、を繰り返すことによって、成果が生まれてくるということ。

 

「ルーチンで算出されて、誰も見ていない、または表面だけ見ている」これでは死んでいる数字です。「数字の背景を推測して、敏感に対応し、効果を高めていく」これで初めて活きている(PDCAが回っている)数字になるわけです。数字を出すだけではもったいない、と大場さんは仰っています。

 

またもう1歩先のノウハウとして、「実施前に結果は決まっている」という具体例をお話しいただきました。大場さんにお話しいただいたのは、メールマガジンの配信効果と、広告の出稿成果について。「どんな商品をどんな内容で施策を打ち、どんな成果を得たか」その実績を普段からきちんとデータ管理しておくことで、逆に「どんな商品でどんな内容の施策を打てば、どんな成果を得られるか」を実施前に予測することができるというわけです。ここも日々の積み重ね、が重要ということです。

 

 

今回の研究会テーマにおける大場さんの結論は、「活かしてこそ」。

「データを取らなければ、暗闇を進むようなもの。データを取るだけは、地図を知っているだけ。データを活用することは、正しい道を歩くこと」

大場さんが話してくれた原文をそのまま使わせていただきました。

 

第3回のWebビジネス研究会、参加された方が最多の35名様でした。

大場さん、バージンダイヤモンドはもちろんのこと、やはり皆さまECの可能性を感じておられるのだなと、強く感じました。新しい発見や学びがあったなら幸いです。

 

 

さて、次回のWebビジネス研究会は5月15日(火)16:00~、アーク情報システムさま会議室におきまして、「IT企業のWebマーケティング」をテーマに、わたくしナビゲータ石田がお話させていただきます。詳しくは秘密ですが、IT業界の皆さんにとって必ず学びのある、また理論だけではなく「今日から動き出せる」内容にします。お楽しみに。

また、第4回はゲスト講師兼ゲストナビゲータとして株式会社船井総合研究所の江尻高広さんをお招きしています。江尻さんはIT企業を中心とした経営コンサルタントとして活躍されており、IT企業におけるマーケティングの必要性を説いていらっしゃいます。IT企業の現場における実例や取り組みをご紹介いただけるはずです。

ぜひふるってご参加いただければと思います。

 

最後になりましたが、今回ご講演を受けてくれたバージンダイヤモンド・大場さん。会議室を提供して下さっているアーク情報システムさま。BPIA事務局の青山さん、臼井さん。そしてご参加いただいた35名の皆様。心から感謝いたします。ありがとうございました。

 

 

ではまた次回、5月15日にお会いしましょう!

 

 

石田麻琴 株式会社ECマーケティング人財育成(http://www.tomboy-girl.com/) 代表取締役社長

<いしだ・まこと> 早稲田大学卒業後、ネット通販ベンチャーに6年間勤務。1年間で売上7,000%アップ。1人で年商3億円を実現。仕入・マーケティング・システム開発・ マネジメントなど、ネット通販の経営力を徹底して身につける。「『いつかやろう』を、『いまやろう』に」をテーマに、ネット通販を中心としたインターネッ トビジネス支援の株式会社ECマーケティング人財育成を設立。自身のtwitterでは「読んで得するネット通販のコツ」を連載中、フォロワー4万人を突 破。徹底した「本質主義」の姿勢と提案から、ネット通販だけでなくWEB関連のセミナー講演も受けている。クライアント満足度・信頼度100%を目指して いる。