レポート 研究会 2012年度 研究会/講演会 面白工学研究会

【第4期 面白工学研究会(第4回)】報告

テーマ 組織と仕事を面白くするマネジメントとリーダーシップの事例研究
ゲスト 株式会社組織と働きがい研究所 代表取締役 斎藤智文氏

Great Place to Work® Institute メキシコ シニアアドバイザー 、経営研究所 シニアフェロー、関西大学大学院 非常勤講師、著書:「最高の職場」「日本人事 NIPPON JINJI」「世界でいちばん会社が嫌いな日本人」、「働きがいのある会社ー日本におけるベスト25」

2012年4月5日(木) 17:00 - 19:00 /  コクヨ霞が関ライブオフィス

 

参加者

富士男♪(渕野康一、ナビゲータ)、タッキー(かせ沢孝之、サブナビゲータ)、犬飼隆司、三原和男、古瀬村佳亮、井ノ上美和、横山弘樹、石田麻琴、谷口擴朗、片貝孝夫、野間能子、林賢、ことみさん(臼井琴美)、実験君(池邊、記録) 敬称略

 

■配布物

[1] テキスト「部下の心を動かすリーダーシップ3」(新規参加者)

[2] 日経BP社の人材開発支援サイト ヒューマンキャピタル Online

~ 人生も仕事も面白くする方法~面白主義の実践(リーダーシップ) ~

[3] 第4期面白工学研究会<第4回>、レジュメ、第3回議事録、宿題と次回・番外編の予定、参加者

[4] 「ikebe  World」改訂第二版(組織デザイン Thinking Map 「エモーショナル・レイヤ」)

 

 

■研究会ダイジェスト

第4期の第4回目の研究会は、海外の「働きがい」に関する動向に多様な知見をお持ちの斎藤智文氏をゲストにお迎えして開催された。主題は、「組織と仕事を面白くするマネジメントとリーダーシップ」であったが、今の日本の企業、働く人の実態を浮き彫りにして、「働きがい」のある会社、更には、従業員にとってばかりでなく、「様々なステークホルダーに配慮」する会社を創り上げるマネジメントとリーダーシップが必要という提言であった。

 

(1)  バブル経済崩壊で年功序列制が破綻し、1997~98年の大企業の経営破綻で終身雇用制も破綻して、今の日本企業には「元気な人がいない」「働きがいが低い」「社長と従業員の距離が遠い(コミュニケーションがない)」「愛社されない」、また、日本社会としても「自殺者が多い」といったマイナス面が強い

(2)  「組織における働きがい」は、個人と仕事と所属する組織の関係によって定まる。マネジメントに対しての「信頼」、仕事に対しての「誇り」、仲間に対しての「連帯感」で構成される。「働きがい」を感じている人は、「組織への貢献意欲」と「仕事の遂行意欲」の両面でモチベーションを持ちやすい。「帰属意識」も高くなる。

  • Great Place to Work® は、従業員がどのように「認識」しているかをサーベイしている。「事実」であるか否かはわからないが、「働きがい」に大切なのは、どのように「認識」しているかであり、もし、ポイントの低いもので、それが事実でないとすれば、是非上手にメッセージを発信すべき。もし、事実なら、改善すべき点は改善しなければならない。メキシコ、ブラジル、アメリカの企業の評価が高い。SASインスティテュートは最も素晴らしい会社、ウェグマンズは離職者が少ない。ダイソン(欧)は“Very Very Face to Face”。メキシコの社の事例紹介(インテルプロテクシオン)。

(3)  しかし、「働きがい」だけでは不充分。従業員にとって「働きがいのある会社」は何よりも大切と思うが、特定の価値観だけに賛同した多様性のない人材だけを採用し、特定のタイプの人材を重用して、それ以外ははじき出すような会社はよくない。「今いる従業員」だけがハッピーな会社は、けっして賞賛されるものではない。「会社は社会の中でいかされている存在」なので、さまざまなステークホルダーに配慮した会社でなければならない。誇りが持てない会社では「働きがい」もない。

  • フォーブス誌で2010年に発表された「世界で最も倫理的な100社」の調査では、日本企業は3社(花王、日本郵政、リコー)しか選ばれなかった。
  • 日本におけるCSR経営の元祖は、「高田屋嘉兵衛」。大火のときに被災した人々を救済し、また、そればかりでなくアイヌの方々を差別しなかった(近江商人は「三方よし」で有名だが、北海道のアイヌを差別し、搾取した歴史的事実がある。アイヌに敬意を払い公正に接したのが高田屋嘉兵衛)。

 

■参加して気づいた「面白工学」の諸側面

「人が何かに習熟して、一流になるためにかかる一万時間」というお話しがあった。平日4時間で約9年7ヶ月、毎日12時間ずつで約2年3ヶ月、週末(土日)2時間ずつで約48年になるという。

 

それにしても、これだけの長い期間、多大な努力を、諦めることなく継続していくためには、苦しいことばかりではもたない。強い信念、夢と希望、成し遂げる見通しが必要であるが、そればかりでなく、一貫した長期ビジョンと雑念を捨てて没入できる魅力ある仕事でなければならない。

 

誰しも、魅力のない仕事に必要以上のことはしたくない。生活のためだけに、言われたことだけをやればよいということになる。そこでは、一流のプロフェッショナルは育たず、組織としての競争力も育むことはできない。

 

日本企業が、そして、日本がもう一度元気を取り戻すためには、一流のプロフェッショナルを育てる、一貫した長期ビジョン、雑念を捨てて没入できる魅力のある仕事を深慮遠謀してデザインし、面白い職場、働きがいのあるある会社にして行かなければならない。

 

■記録を纏めて気づいたこと(話題提供)

「会社は社会の中でいかされている存在なので、さまざまなステークホルダーに配慮した会社でなければならない」との問題意識は、私の意識と深く共鳴した。しかし、そもそも、日本企業は儲けばかりでなく、社会に貢献することを謳ってきたのだから、今更、欧米から輸入された「企業の社会的責任“CSR”」を云々することに激しく反論する人もいる。

 

日本人が成功を体験した高度経済成長の時代は、まさに、エコノミックアニマルと酷評された時代でもある。なりふり構わずとは言わないまでも、ひたすら裕福な暮らしを求めて働いたその時代は、本当に、日本人にとって「やりがい」「働きがい」のある時代であったのだろうか。

 

海外の人達がどうで、日本人は彼らにどう映るのだろうかと、謙虚に問い直すことは大事だと思う。これは、人の目ばかりを気にするということとは異なる。

 

■宿題と次回以降の予告

(1) 宿題 「実践事例」

  • 一件一葉方式で3~1枚作成  [書式] 「私の面白工学実践事例(要旨)」
  • 5月5日(土)までに、事務局とナビゲータに提出

(2) 次回 5月10日(木) 17:00~19:00、19:00~面白交流、「メンバーによる実践事例研究」

以上

※「最高の職場」いかに創り、いかに保つか、そして何が大切か