※レポート更新しました(2018/04/20)
【レポート】
こんにちは、BPIA広報委員会の石田です。今回は4月18日(水)に日本オラクルさんのセミナールームで開催された、BPIA例会についてレポートさせていただきます。
今回の例会では東京大学工学系研究科教授・TMI専攻長総長特任補佐の坂田一郎氏をお招きして「スマート化時代の大学の役割と人材育成」をテーマにご講演いただきました。
コンピュータ・インターネット、通信インフラ等々の進化によって経済・社会のゲームチェンジのスピードが年々早くなってきています。世界は大変長らく労働集約型を歩んできましたが、資本集約型そして知識集約型に変化しています。知識が価値を生み、個を活かす社会であり、これが「スマート化」です。我々はこの変化に合わせて知識集約による新たなスタイルでの価値創造を行なわなければいけません。
ひとつの事例として挙げていただいたのが東京大学発のベンチャー「WASSHA」が行なっている「無電力化地帯の電化(ソーラーキヨスク)」の事業です。アフリカのタンザニアには無電力の地域がまだまだ多くあります。従来であれば鉄塔を立て電線を引いて、となりますが既存の障害を別の手段で超えることができるようになりました。
タンザニアの人々の多くはスマートフォンと電子マネーを持っているのです。そこで少量電力の量り売りを行ない、無電力地帯に電力を販売する仕組みをつくりました。スマートフォン・電子マネーという社会インフラのゲームチェンジがおこったことで、既存のルートを通らないサービス・ビジネスの実現が可能になったわけです。
また現在の経済・社会の特徴は資金フローが「期待値」により駆動されている点です。従来は企業の売上高と時価総額には相関性がありましたが、現在の企業では必ずしも売上高が時価総額を決めているわけではありません。そこには「期待値」が影響します。売上高を重要視するモデルから「期待値ビジネス」へ、小さなR&Dで大きな時価総額を生み出す市場に変わってきているのです。
知識集約型の世界の中での「人材育成上の課題」として、坂田先生は5つのテーマを挙げられました。1.HOWだけではなくWHATを思考できる人材。自ら「問いを立てる」能力を鍛えることが大切であり、今後サイバー空間の知見・技術は国語や算数と同じレベルの存在になっていきます。2.「知・技能」「経済メカニズム」「社会システム」の3つを俯瞰して思考できる人材。「無電力地帯の電化」の事例は正にです。3.不足が著しいAI、情報セキュリティ、フィンテック分野の専門人材。4.社会に出ている人材のリバタライズ。5.変化の時代を楽しみ、変化を作り出す人材。ゲームチェンジを勝ち抜くための人材です。
また講演の最後では東京大学が試みている人材育成についてもお話いただきました。スマート化のゲームチェンジによる勝ち負けは2020年前後、あと数年で勝負が決まると言われています。もしかしたら学生を教育するよりも、我々自身が変わることが急務なのかもしれません。
最後になりますが、会場をお貸しいただいた日本オラクルの宇木さん、BPIA事務局の川上さん、誠にありがとうございました。
【開催概要】
2018年度第3回BPIA例会は、4月18日(水)朝8:00より開催です!
この度は、東京大学教授の<坂田一郎氏>をお招きいたします。
「スマート化時代の大学の役割と人材育成」と題し、東京大学での取り組みをご紹介いただきつつ、皆さんで議論を交わす場としたく存じます。
大変貴重な機会となります。どうぞ奮ってご参加ください!
たくさんの皆様のお越しをお待ち申し上げております。
日時: | 2018年4月18日(水)朝8:00〜9:30(受付開始 7:45〜) |
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場所: | 日本オラクル株式会社 オラクル青山センター 13F 会議室 外苑前駅 4B出口直結 http://www.oracle.com/jp/corporate/branch/aoyama-078891-ja.html |
タイトル: | スマート化時代の大学の役割と人材育成 |
講師: | 坂田 一郎(さかた いちろう)氏 東京大学工学系研究科教授・TMI専攻長 総長特任補佐 |
対象: | BPIA会員限定 |
参加費: | 3,000円(朝食代込。当日申し受けます) |
進行: | 田村俊和(BPIA理事 例会担当) 日経BP社 取締役 経営メディア本部長 |
※「例会」は、BPIA会長、会員経営者、または外部経営者知見者を講師に招き、グローバル時代の経営を様々な視点で議論し、相互研鑽とビジネス交流を図る、BPIA会員限定の勉強会となります。
◎講演概要
現在、デジタル革命を駆動力としたSociety 5.0の実現が模索されている。そこでは、資本集約型成長から知識集約型へのパラダイムシフトが起こり、経済的な価値の重心について、物から情報・知恵へのシフトが加速するものと予想されている。
また、産業構造については、データ駆動型のイノベーションによって分散、遠隔と連結が鍵となったスマート化へと向かうとともに、従来あった産業間の境界線は消えていく。
一方、企業に対する評価基準は、売上高や雇用からビジネスモデル等に関する将来への期待値を重視する方向に変化してきている。
こうした構造変化の中で、大学が担うべき役割や育成する人材像、育成手法も変わる必要がある。例えば、上位レイヤーでは、科学技術イノベーション、社会システム、経済メカニズムの3者を俯瞰してビジョンやロードマップを構築できる人材、実装のレイヤーでは、データの取得、解析、解釈とソリューションの提供までの一連のプロセスを設計できる人材の育成が重要となってくる。
東京大学での取り組みを紹介しつつ、議論をしたい。
◎講師プロフィール
坂田 一郎(さかた いちろう)氏
東京大学工学系研究科教授・TMI専攻長
総長特任補佐
東京大学経済学部卒、ブランダイス大学国際経済・金融学大学院修了。東京大学より博士号(工学)取得。経済産業省を経て、2008年より東京大学教授。現在、工学系研究科教授、総長特任補佐、未来協創推進本部ビジョン形成分科会長等を務める。
学外では、国土審議会特別委員、地域未来牽引企業選定委員会委員長、荒川区教育委員等を兼務。専門は、データサイエンスの手法による意思決定支援、学術ビックデータを用いた未来予測、地域のコネクター・ハブ企業論。論文・国際会議プロシーディングス論文150編以上。
最近の著書(共著)に、東北地方「開発」の系譜(明石書店,2015)、Knowledge Structuring Tools for Decision Support in Global Perspectives on Service Science Japan(Springer,2016)等。
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