Webビジネス研究会 レポート 研究会 2013年度 研究会/講演会

【Webビジネス研究会 】報告

テーマ: フォーマル子供服専門店KAJINのブランド戦略
ゲスト: 林志英 株式会社KAJIN 代表取締役
2013年7月18日(木)16:00-19:00/オラクル青山センター

 
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皆様、こんにちは。BPIA・Webビジネス研究会ナビゲータの石田です。今回は7月18日に外苑前のオラクル青山センターセミナールームにて開催させていただいた第10回Webビジネス研究会「フォーマル子供服専門店KAJINのブランド戦略」についてレポートさせていただきます。
 
第10回のゲスト講師としてお招きしたのは、株式会社KAJINの林志英社長。3
 
林さんと私石田の関係は、Webビジネス研究会ナビゲータで株式会社バージンダイヤモンド取締役の大場さんにご紹介いただいて始まりました。昨年の4月のことですから、ほんの一年前のことです。それから、ビアガーデンにお誘いしたり、KAJINさんのオフィスにお伺いして一緒にランチを食べたり、林さん主催の交流会に参加させていただいたりして、仲を深めさせていただいています。
 
今回は、女性起業家としての林さん個人と、フォーマル子供服専門店KAJINがどのような成長をしてきたのか、ぜひお聞きしたい思い、講演を依頼させていただきました。
 
林さんの出身は中国の蘇州の出身です。小さい頃は家庭環境に恵まれませんでした。このときの経験が、仕事や人に対する「想い」の原点になっていると林さんは言います。林さんは、好きな英語で外交官を目指そうと、勉強漬けの高校生活を送ります。中国でもトップクラスの名門校・上海復旦大学に合格することができたのですが、合格通知書には「日本語学科」の文字が。運命のいたずらか、この時から日本との関係がスタートしました。

あいうえお、から日本語を勉強し、大学三年の時、「日本語検定試験一級」に合格。その実力から、日本人アーティストの上海コンサートツアーでボランティアとして通訳を務め、そのときに、のちに日本への留学の身元保証人を引き受けてくれる大分の男性と出会いました。

林さんはスーツケースと、たった6,000円だけを握りしめ大分の大学に留学しました。大学卒業後は、物流事業をおこなう一部上場企業に就職。会社では、初の女性総合職、初の外国人社員として活躍し、結婚・出産・育児休暇、そして職場への復帰と、不自由のない安定した生活を送っていました。
 
そんなときに始めたのが、「KAJIN」でした。2001年のことでした。

実はKAJINは最初から「フォーマル子供服専門」のネットショップではなく、オープンした当時は「アジア雑貨・衣料品のお店KAJIN」でした。会社のOLとして国際物流部門を担当しながら、家に帰れば2人の子供を育て、時間が空いた夜中に、ネットショップを運営する、そんな生活でした。ネットショップの事業をするための、時間も、知識も、人脈も、お金もありませんでしたが、「パソコンでなら世界中と繋がることができるかもしれない」という、確信がありました。
 
KAJINをフォーマル子供服の専門店にしたのはそれから一年後のことでした。取扱っていた商品の中でも、フォーマル子供服の売れ行きが非常に良く、商材を絞り込むことに特に抵抗はなかったとのことです。ネットショップが成長していた時代に、商材を絞り込むという選択は、簡単ではないと思いましたが、このあたりが林さんの商才と言ったところでしょう。

ただ、まだまだ売上が少ない中で、子供ドレスの仕入れルートの開拓は大変でした。バンコクの業者には小ロットということで断られ、悪戦苦闘の結果、インターネットが進んでいるアメリカの「ebay」にたどり着きました。まずは、ebayから商品を仕入れ始めたのです。

2003年、月商40万円を達成したことを機に、ネットショップ一本に力を入れることを決意します。林さんが講演で言った言葉が印象的でした。「人間は裸で生まれて、いずれ裸で土に返っていく。今の安定を失っても、自分が想うことにチャレンジしようと思った。失敗しても6,000円だけを持ってきた自分に戻ればいいだけだから。」
 
それからのフォーマル子供服専門店KAJINはどんどん拡大していきました。今では、運営スタッフ14名、外注配送センター3名の規模になっています。その枠はネットショップだけ収まらず、実店舗の出店、シンガポールへの海外展開、子供ドレスファッションショーの開催など、株式会社KAJINの「世界中の子供たちに笑顔の華を咲かせたい」という想いを着実に形にしています。

今では、フォーマル子供服に特化したことがブルーオーシャン戦略だった、ニッチだった、と林さんは笑いますが、ネットショップが本格的に盛り上がり、出店数が爆発的に増加する前の2003年の時点で商材を絞ったことは、繰り返しですが林さんの感性の鋭さと思いますし、この10年間で商材を広げず特化し続けて成功しているのは、株式会社KAJINとしての強い「想い」があるからこそ、なのではないかと思いました。
 
林さん自身は、テレビや新聞・雑誌などのメディア、最近ではエッセイも出版され、活躍されていますが、株式会社KAJINの顔だからこそ。自分自身が広告塔になり、まず林さん自身に興味を持ってもらい、いい関係が築ければ、必ず林さんのビジネスにも興味を持ってくれるはず。だからこそ、人に興味を持ってもらうために努力をするわけです。
 
もう一つ、講演の中で印象的な話がありました。

経営が悪化している仕入先が、子供服を40着買ってほしいと頼みにきた。正直、その子供服は売れそうには思えなかったが、林さんはその40着を快く引き受けた。案の上、その40着は値引きするまで売れなかったが、仕入先の経営に貢献することができた。今、その仕入先は経営状態が戻り、株式会社KAJINの10周年記念パーティーにも大人数で駆けつけてくれた。という話です。

結果的に良かったね、という話です。売れない商品を仕入れるのは情でも良くない、という方もいると思います。様々な意見があると思いますが、私が思ったのは「林さんは良い方と付き合っているんだな」ということです。人の裏側を知ることは難しいですが、普段からきちんと人と接し、想いを共有できていれば、必ず良い人や良い会社とお付き合いができるのではないかと。自分の付き合い方に自信があれば、人を信用し助けるのは当然、ということを林さんは体現されているのだなと感心しました。
 
第8回でご講演いただいた桃源郷株式会社は、2011年の東日本大震災以降、意図的にニッチなネットショップを増やし続ける戦略に大きくしシフトし、今回の株式会社KAJINは2003年からフォーマル子供服というニッチなネットショップを運営しています。

amazonという超自動販売機の台頭や、ネットショップが無限に増え続ける中で、ひとつの大きなテーマは「ニッチ」なのだろうと思います。インターネットというものは、ユーザーの欲求→検索から全てが始まるので、いかに欲求とサービスを確実にマッチングさせるか、つまり欲求とサービスがユーザーにとっての対になるまで掘り下げられるか、それが大手ではないWebサービスの生きる道なのかもしれません。
 
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第10回Webビジネス研究会、いかがだったでしょうか?
 
今回もたくさんの方にご参加いただきました。多くの方に懇親会までご参加いただき、本当にありがとうございました。サブナビゲータの谷口さんも久々の参加ということで盛り上がりました。
 
昨年の12月からスタートしました第二期のWebビジネス研究会、全5回がこれで終了です。第三期のWebビジネス研究会は10月もしくは11月からのスタートを予定しています。内容等、打ち合わせ中ですので、決まり次第、BPIA事務局よりご連絡を差し上げます。

また、12月9日(月)16:00~、Webビジネス研究会の特別編として、私石田とナビゲータの大場さんが連載している日本ネット経済新聞コラム「人を育てる」のシンポジウムを開催したいと考えています。ナビゲータの石田と大場さんがお話させていただきます。こちらもオラクルさんをお借りしていますので、是非ご予定を空けておいてください。
 
最後になりましたが、ゲスト講師の林さん、ご参加していただいた皆さま、会場をご提供いただいたオラクルの宇木さん、BPIA事務局の青山さん、臼井さん、誠にありがとうございました。感謝します。
 
それではまた第三期に、お会いしましょう! 1
 
 
 
◎Webビジネス研究会
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◎レポート 石田麻琴 株式会社ECマーケティング人財育成 代表取締役社長
 
7-1<いしだ・まこと> 早稲田大学第一文学部卒業後、インターネット通販ベンチャーに6年間勤務。ネットショップ店長として、仕入・マーケティング・システム構築・物流などを1 人でこなし、1年間で売上7,000%アップ、年商3億円を実現。インターネット通販を中心としたマーケティング支援/マーケティング人財の育成を目的とした株式会社ECマーケティング人財育成を設立。有力EC/Web企業を支援。船橋情報ビジネス専門学校特別講師など人材育成にも注力。その他、商工会議 所での講演、新聞やWebでの連載など。
ご紹介;連載中のITMediaエグゼクティブコラム(http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1302/13/news013.html

 

<参加者感想>
・ネットビジネス立ち上げからトータル的な内容で分りやすく、良かったです。経営理念も参考になりました。
・起業家精神にあふれたお話を伺えました。
・大変興味ぶかいお話でした。一生懸命がよいですね。
・ゼロからのスタートということに強く感激しました(ありがとう)
・仕事はやりがい、自分を輝かせることができるかで選ぶ 林さんの思いが刺激になりました。
・感動しました。
・ネット通販ビジネスの講演、勉強になりました。
・林先生の人柄がビジネス成功の秘訣だと感じました。
 また、単純にもうかる事より、やりたい事、やれる事を優先した意思決定をされている事も成功の秘訣の1つだと思いました。
・立ち上げの経緯が聞けて大変参考になりました。