レポーター: 草井寛之 東洋アルミニウム株式会社 コアテクノロジーセンター 研究開発室
皆が実践できるイノベーションプロセスを考えるワークショップの第5回目が2014年3月7日に開催された。
今回のワークショップは以下の様な流れであった。
前回行った演習の類似課題で、「共感」コミュニケーションのロールプレイング
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創造的課題解決プロセスの「問題定義」について
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問題定義に有効な「問題の構造化」
順次、小職個人の感想・意見を交えて、レポートをさせて頂く。なお、レポート課題そのものが非常に価値ある情報資産と思うので、レポート内で具体的な内容は記載しない事を了承願いたい。
「共感」コミュニケーションのロールプレイング:
最初に、前回学んだ「共感」コミュニケーションによって、ニーズを具体的かつ網羅的に抽出するという課題を、ロールプレイング方式で学んだ。具体的には、「推定ニーズ」を考えて「共感コミュニケーション」を行う。
今回のロールプレイングでは、挑戦者の2名は非常に多くの「推定ニーズ」を用意して望まれた。全ての推定ニーズが外れてから、必殺ワードの「~について、他にはどの様な問題状況が起こっていますか?」と質問をしたところ、顧客役の渡邉先生が現在の問題について説明を始めた。それをきっかけに、共感コミュニケーションを行い、課題を全て抽出できた。
ロールプレイング終了後に渡邉先生の一言。「2~3回推定ニーズを投げて駄目なら、「どういった悩みをお持ちでしょうか?」と聞いてしまってよい」との事。確かに、「それは違う」「これも違う」「あれも違う」では、コミュニケーション不全になりそうで、推定ニーズを投げる「程度」も重要であると実感した。
本ワークショップでは、この様なロールプレイングがよく行われているが、実際に行われている様子を観察させて頂くだけで非常に勉強になる事が多い。特に、「話し方」であったり、「会話の間」であったり、普段自分が打ち合わせを行っているときに意識を向けられないところも観察できた。この様なロールプレイングによる実習も、仕事の教育訓練として活用できるのではと感じた。
創造的課題解決プロセスの「問題定義」:
次に、課題を抽出したら、抽出したメモを「プライベートマインドマップ化」し、それを基に問題定義を行う。問題定義は「チームメンバーと共有」し、自分自身やクライアント自身が気づいていない課題について、チームメンバーに自由に言ってもらう。
場合によっては再度顧客を訪ねて、チームメンバーとの共有によって表出したニーズの確認を行う。
このチームメンバーとの情報共有とニーズの表出、確認を繰り返すことで、「問題の構造化」を行う。
今回の演習では、準備された「ヒアリングメモをプライベートマインドマップ化」したものを基に、問題の定義を行い、定義した問題についてtwitterで1~2tweet(140-280字)しようというものであった。
マインドマップの情報を基に「文章を組み立てる」という作業は初めて行ったが、「雑然としたメモ書き」を基に文章を作成するよりもずっと容易であった。今後、メモをプライベートマインドマップ化し、それを基に様々な文章を作成しようと思う。イノベーション以外に、仕事の基本スキルも学べるという点も。このワークショップに参加する利点と思われる。
問題定義に有効な「問題の構造化」:
収集したクライアントのニーズを、因果関係を考えながら並び替えを行う。この時、「要望」は「悩み」に返還してポストイットに書く。この時、原因から結果という軸を作成するのがポイント。
次に、「クライアントの意見」以外に想定される原因を考え、加える。場合によっては、顧客の悩みが「結果」だけしかもらえない時もあり、その場合は自分たちで原因を考える必要がある。
考察結果全体を俯瞰し、想定したものも含めて核心的な点を5つ選ぶ。なお、5つの内、想定した原因は2つ以内に留める。この作業を。チームで行うことにより、多角的な視点を得ることが出来る。
感想:
小職は会社で技術開発を担当している。このセミナーを受講することによって、「売れる製品」という物の見方が大きく変わった。今までは「自分ならこんな「凄い物」を買いたい」という視点で開発を行っていたが、今は「こんな製品があったら」と思われているのはどんな製品なのだろうという視点ができた。
日本の「モノ作り」に関して、技術は立派であるが顧客の事を考えていないという批判もある。これに対応するためには、「ニーズ」というものを一度考え直すのが有効で、その際、本ワークショップが大きな力になると思われる。
全部で7回しかないため、残り2回で終了してしまうが、このワークショップで学ぶことが出来た「ニーズ探索」という手法を、「消費者/ユーザー」が欲しいと思うモノ作りに活かしていきたい。可能であれば、この様な機会を今後も継続的に得られたらと思ったところで、レポートを締めくくりたい。
以上。
◎皆が実践できる「イノベーションプロセス」を考える研究会のページ
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